第6話 え?だって演技でしょ?

「クドクド────クドクド────」

彼こと惣代風 蒼馬に話しかけてから、彼の表情をよく観察した。普段はそんなことしないのに、何となく見てしまったのだ。本について話しかけたけど、私はほとんど聞いちゃいなかった。

(ちょっと罪悪感あるなぁ)

そして、そんな中、よく観察していないと、それでも見付けられるかどうか、それくらい少しだけだったけど、見つけた。

彼は ”嫌われようとしている”

「クドクド────って感じなんだ!!」

何だか長かったらしい話を締め括った彼の顔には、ちゃんと書いてあった。

”これで嫌いになったろ” って

だからだろうか、意地でも彼に食らい付いてやろうと思ったのは、まるで立ち入り禁止の看板を見つけて、逆に入りたくなったときのような衝動に駆られて、私は看板を無視して前に出る。

「じゃあ、この本買ってみようかな。」

「・・・え?」

してやった!つい笑ってしまいそうになるくらい彼の目が真ん丸になっている。

だって仕方ない。入るなと言われれば入りたくなるのが人間だ。その好奇心を抑えられるほど、私は大人じゃない。

唖然とする彼に本を手に取り

「えっとレジはー?」と言うと、ようやく調子を取り戻した彼は

「本当に興味を持ってくれるなんて嬉しいな。レジはこっちだよ。」

と先を歩き始める。後ろを歩く私の顔は多分、今までにないほどニヤけているだろう。


その後、私が手に取っていたのが、お高い限定版で値段に衝撃を受けたのは秘密です!


何でこんなにすんのよ!


ふふふ、なんだか、上手くいきそうね。今日の明梨は新鮮で面白かったし、どうやら、蒼馬くんには、まだ私も調査不足ね。


2人の気付かないところで、1人、ノートを眺めながら笑みを浮かべる少女がいた。




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