第10話 夫のクズぶり 3 結婚式

 私は結婚式に出るのは好きです。でも、自分が結婚式をするのは面倒臭いと思うタイプです。ウエディングドレスも白無垢も興味無しです。夫も、もちろんそんな行事は大嫌いです。似たもの夫婦かもしれないです。


 ところが似てないのが、夫は自分の両親が大好きで、私は自分の毒親が大嫌いなところです。夫は親から叱られたことが一度もないと言います。夫の両親は息子を溺愛していてすぐにお金を渡します。


 夫の実家は海のそばにあります。

 結婚が決まると夫の両親は夫に車を買ってやりました。もちろん駐車場も親が準備して借りてくれています。


 ところで夫はお酒もタバコもやります。

 一昔前は、今ほど飲酒運転に厳しい風潮もなく、少し飲んだくらいでは運転する人がたくさんいました。

 いつも飲酒運転をやめるように注意していましたが「大丈夫に決まっているじゃないか、ハハハ!」と。


 夫は、飲酒運転をし実家の駐車場が面倒な場所にあるので浜辺の道路に路駐することにしたそうです。

 そこは、皆が路駐する場所で先客の車が結構停めてあるのですが車が一台入る場所を見つけ駐車しようとしたら前の車にぶつけて、相手の車のバックライトが破損してしまったそうです。


 そこで夫は慌てて面倒な場所にある自分の駐車場に停めて家に帰ったのです。


 何日かして、親から近所の車が当て逃げされて気の毒に、と聞かされたと。


 自分の息子がやったとは思わないのがすごいと思います。どう考えても、そんなことをするのは夫しかいない感じの地域です。


 「それ、ご近所なら親も今後の付き合いがあるし正直に言って弁償した方がいいんじゃない?どうせ親がなんとかしてくれるんでしょう?」と言ってみたところ、

「いや、親に悪いし。今回はいいや。」


 事なかれ主義…。


 結婚式はしないと二人で決めていましたが、夫の両親が結婚式は親のためにするもの、親孝行のためにすべきと夫を攻め立てたらしく

「親に悪いからする。」と意見が変わりました。


 私の毒親も「結婚式を挙げないと離婚することになる。」と言い切り、我が儘と言われ仕方なく結婚式をすることにしました。


 ほぼ親のためにした結婚式ですが、それなりに披露宴にはお世話になった方々をご招待させていただきました。


 私の尊敬する音楽短大専攻科時代の先生もお呼びしました。


 結婚式の前日は、夫の招待した通ってないはずの大学時代の友人達7人が新居に集まって大宴会をし、何度も夜中に明日結婚式だから切り上げるように夫の両親が電話しても「わかってるよ!大丈夫だから!」と切れて言い結局、朝3時過ぎて自宅に帰り、ヒゲも剃らず式場へ来ました。


 二日酔いで結婚式…。風呂にも入っていないのかタバコ臭い…。最低です。


 結婚式の時の写真が出来上がり見てみると、まるで結婚詐欺師のような夫が写っていました。しんどいのに頑張った笑顔なのでそうなったのかもしれません。


 夫に「あんたね、私は詐欺師に会ったことないよ。でも、きっとこんな顔だと思うわ。」と言うと

「うん、俺も自分が詐欺師に見えるよ。」と言ってました。


 結婚式を挙げて新婚旅行から帰ると私は、自分のピアノの先生のお宅にお土産を持ってご挨拶に伺いました。


 当時60代で寡黙な先生でしたが、

「ご主人様は、男前ね~!」とおっしゃいました。

私は、

「いや、けして顔で選んだ訳ではありません。」

と大嘘をつきました。


 その後、街でさほど親しくない同級生から声をかけられ、

「バーバラさん、すごい男前と結婚したんだってね。」

と言われました。

「えっ?なんで知ってるの?」と聞くと教えてくれました。


 私のピアノの先生が、親しい大学の教授に結婚式で見た私の夫がえらく男前だったと話してしまい、そこから先生方に伝わり、各々の弟子へ広まったのでした。

 

 自分のクズぶりがバレるみたいで、しばらく音楽関係者に会いたくない気分でした。













 


 

 

 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る