作戦会議

さとるが、椎羅と、圭二から衝撃的な真実を告げられた時だった。

「未来に、僕と、るーちゃんは、いない?」

さとるが確認した。椎羅は、黙って頷いた。

「親父、分かってくれ。未来を変えられるのは、あんたしかいないんだよ。」

圭二も頷いた。そして、一枚の写真をさとるに見せた。

「こいつが、犯人だ。」

「誰だろう、僕、見たことないんだけど。」

「椎羅が、未来から持ってきた写真だ。」

うーん、と首をひねる、さとるであった。


その時、武が連絡を受けて、駆け付けた。

「どうしたんや。何が起こったのか説明してくれるか?」

「武。この写真に、見覚えはないか。」

「こ、これは!!」

圭二の問いに、武は戸惑った。ここで真実を明かしていいものか迷った。

「武、正直に答えろ。」

圭二は、厳しい顔つきで武を睨んだ。そして、とうとう、武は言った。

「・・・叔父貴、だ。」

「え、どういう事なの? たけちゃん。」

さとるも驚いて言った。武は一体・・・。

「この写真の人物が、さとくんとるーちゃんを狙っているんだ。」

「何やて?!」

圭二の話を聞いて、武がとうとう、観念したように言った。


「俺は、間宮コンツェルンの、次男。間宮武、だ。」

「えっ、間宮、っていうの? コンツェルン?」

さとるには、分からないことだらけだ。圭二が説明する。

「武。お前が新堂財閥と対立する、間宮コンツェルンの御曹司、ってことは俺には分かっていた。お兄さんと、一緒に居るところを見てしまった。ごめん。」

「ええんや、もう俺は家出してもうたから。叔父貴と一緒に暮らすのは、まっぴらだったんや。」

「え、なんで叔父さんと一緒に暮らしてたの?」

さとるが、素朴な疑問をぶつけた。武は、うんうん、と頷いた。

「俺の父母は、いない。飛行機事故でいなくなった。」

「そうなんだ・・。それで叔父さんと暮らしてたんだね。」


「兄貴は、まだ、叔父貴と暮らしている。そうすると、兄貴の命も危ない、ってことか?!」

武は心配そうに言った。椎羅が頷いた。

「未来に、さとるも、るりも、あんたの兄貴も、いない。」

「え、お前何者なんや?」

武が、椎羅の顔を見て言った。椎羅が言った。

「未来から来た、さとると、るりの息子。」

「え、未来? どういうこっちゃ、分からん。」

圭二が補足する。

「エドワード博士って言う人が、タイムリングの発明に成功した。つまりは、タイムスリップできる、リングだな。椎羅は、それを使って過去、いや今現在にやって来た。」

「けいちゃん、お前も、何者なんや。」

続けざまに、武が質問する。

「おれは、ここにいるさとくんの、未来の執事長だ。アメリカに留学に行っていたが、椎羅の話を聞いて、日本に戻ってきた。」

「え、執事長? 北条さんの息子か?」

「いや違う、武。俺の本名は、伊集院圭二、と言う。詳しく言えば、メイドの伊集院の弟だ。もっとも、俺が執事長になるはずだったのは、33歳になってから、のはずだった。」

圭二は腕組みしてそう言った。


「兄貴と、さとくんと、るーちゃんを助けるには、どうしたらええんや。」

椎羅はしばらくの沈黙の後、こう答えた。

「皆で力を合わせるしか、ない。」

「俺が役に立つなら、なんぼでも力を貸すよって。」

武は心に決めたように、言った。


その頃。

瑠璃のパパとママは、ハイジャックされた飛行機に乗っていた。

「落ち着けよ、何としても、生きて帰るぞ。」

「ええ、あなた。」

その時、パパに声を掛ける、男性がいた。

「失礼ですが、あなたは新堂さんですね。新堂財閥の。」

「ええ、そうです。あなたは?」

「私は、十文字貴仁。黒龍会の、組長です。」

「あ、あなたが!」

黒龍会といえば、知る人ぞ知る、である。

「真美ちゃんのお父さんじゃないですかー。」

ママが口をはさんだ。

「はい、真美が瑠璃ちゃんに、いつもお世話になっております。」

と、十文字さんは深々と頭を下げた。

「新堂さん、ハイジャックの犯人は、ブルーレッドと呼ばれる刺客です。このままだとお二人とも危ない。ここで会ったのもなにかの縁でしょう。一緒に協力して、ハイジャックをやめさせましょう!」

パパはしばらく考えて、言った。

「分かりました、十文字さん。やりましょう。」

『お互い、早く帰りたいですもんね』

パパと十文字さんは、お互いに声を合わせて言った。


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