謎のお兄ちゃん

「じゃあ、るーちゃんお家へ帰ろう。」

と、さとくんが言った。

「俺もついてくわ。」

と、武。

「ありがとう、お兄ちゃんたち。」

瑠璃はお辞儀をした。

瑠璃についていくと、大きな屋敷に着いた。

てっきり孤児かと思っていたさとるは、驚いた。

「るーちゃん、こんな大きなお家に住んでるんだね。」

「うん、パパとママはアメリカに行ってるんだよ。」

「なるほど、そうだったんだ。」

さとるは納得した。るーちゃんは、お屋敷のお嬢様だったのだ。


「ただいまー。」

瑠璃が屋敷のドアを開けると、2人の執事と1人のメイドが出迎えた。

「瑠璃様、ご無事でしたか!」

執事長の北条さんが、心配そうに言った。

「だいじょうぶ。お兄ちゃんたちが助けてくれた。」

瑠璃は笑顔で言った。

「そうでしたか、ありがとうございます。お二人とも。」

北条さんを筆頭に、執事達は深々と頭を下げた。

「北条さん、だったか。断って悪かったな、護衛の話。」

武はちゃんと名前を憶えていた。そして言った。

「るーちゃん、誘拐魔に狙われたんや。改めて、護衛の話、引き受けさせてもらうわ。」

「えっ!そうだったのですね。やはり瑠璃様を1人で外に出すのは危険です。」

「僕も協力します。」

さとるが言った。北条さんは、さとるを見て、少し驚いた顔をしたが、すぐに元の表情に戻ると、こう言った。

「ありがとうございます。屋敷内は私達が命をかけて瑠璃様をお守りします。

もし瑠璃様が外に出た時、あなた方がナイトになって下さると心強いです。」

「ああ。」

「はい、もちろんです。」

と、2人の少年は言った。

「ありがとう、私達もできるだけ協力する。君達がナイトになってくれて、本当に良かった。」

と、執事の藤原さんが言った。


その時、いままでいたはずの瑠璃の姿が見えなくなった。

「あれ、るーちゃんは?」

「えっ?」

「いないし!」

「るーちゃん!!」

2人のナイトは、勢いよくドアを開けると、瑠璃の姿を探した。

「あ、おったわ。」

「いたいた。」

瑠璃は屋敷の庭で、誰かと話している。

「あ、あいつ!」

武は叫んだ。

「るーちゃん、急にいなくなるからびっくりしたよ。ちゃんと一言いってから外に行かないとだめだよ。」

と、さとるが瑠璃に言った。

「ごめんごめん。車の音がしたから見に行ったの。」

と、瑠璃は謝った。

見ると、リムジンの隣に、二人の少年が立っていた。

「あ、君は!」

北条さんが目を丸くした。なぜだか分からないが。

長い黒髪を後ろで一つに束ねた、長身の美青年は、こう言った。

「この子から話は大体聞いた。俺もナイトに入れてくれ。」

「もちろんだよ、ありがとう!」

と、北条さんが言った。

「オレの名前は、杉浦圭二。よろしくな。」

圭二は、武とさとるに挨拶した。その隣には、武が見かけた、金髪がかった色の白い少年が立っていたのだ。

「こいつ、オレの友人。よろしく頼むぞ。」

「仲間になってもいいけど、君達、何者なの?」

さとるは言った。いきなりナイトになりたいなんて、ちょっと怪しいと思ったのだ。


、だ。」

色の白い少年は微動だにせず、きっぱり言った。

「は、はあ・・。」

「わーい。」

瑠璃は無邪気に喜んでいる。

「じゃ、オレは急ぐから。また会おう、るーちゃん。」

「うん。またねー、正義の味方のお兄ちゃん。」

瑠璃は色の白い少年に手を振った。よく見ると額にはサークレットのようなものがはめられている。不思議な少年だ、とさとるは思った。

「君、名前は?」

「シイラ・・・。今はそれしか言えない。」

そして、さっさとリムジンに乗り込んでいった。

代わりに、圭二がこちらにやって来た。

「よろしくな、二人とも。」

圭二は、武とさとるに挨拶した。

「よろしくね、圭二君。」

さとるは挨拶した。ところが、武はそっぽをむいたのだった・・・。




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