君との出会いの代償

俺は彼女、朝日 ヒロミと同じクラスになった事で、少し有頂天になっていた。

そんな彼女が俺の少し離れた後ろに居るとは思ってなかった。

だいたい、家が隣同士でも顔を合わせなければ話が出来ない。

しかし、同じクラスなら否応がなしに相手に会うことが出来る。

だが‥‥‥周りの視線が気にかかる。

やはり同じ名前の男と女が居るのだから、それは話題にもなるよな、と俺が思っていた所に、時野宗吉あいつが来た。



「周りの視線、お前に来てるだろ」


「あ、ああ、確かにな」



俺は周りを見渡すと、他の生徒がヒソヒソ話をしていた。

「あれは双子なのか?」とか「親戚か何かか?」とか色々言われていた。

まあ、一年の時同じクラスだった顔見知りも何人か居たので、それほど騒ぐ言われ方はしなかったが。



「所で宗吉、あいつはどうしたんだよ?」


「あいつ?」


「ああ、悟だよ悟」


「?‥‥‥悟?誰だよそいつは?」


「はあ?何言ってんだよ宗吉」


「何を言っているかは俺の方だぜ。だいたい悟なんてヤツいたか?」


「おい!ちょっと待てよ!あいつは中学から俺らと一緒だったじゃないかよ!」



俺は宗吉が冗談を言って、俺をからかっていると思いムキになり言い出したが、宗吉は誰だかわからない顔をして俺にまた言って来た。



「なあヒロ、悟て誰なんだよ。お前の新しい友達か?」


「なあ!宗吉おまえ冗談だろ!土橋 悟を忘れたのかよ!」


「何ムキになってるんだよ!知らないもんは知らないんだ!だいたいヒロが夢でも見た相手じゃないのかよ!」


「そんなことあるかよ!」


「だったらそこのクラス割の編成表を見てみろよ!その土橋 悟てヤツの名があるか!」



真面目な顔をして俺に言って来た宗吉は俺がまだ夢でも見ているのでは、その様な顔をしてきた。俺は頭に来てヤツを睨むと、クラス割の編成表を見た。



A組‥ない。B組‥ない。俺の居るC組‥ない。D組‥ない。最後のE組‥‥‥ない。

こんな馬鹿なことあるかよ!俺は見落としてないかもう一度探した‥‥‥が、なかった。

あいつの名が、土橋 悟の名が。



「ヒロ、なかっただろ。お前やっぱり夢でも見ていたんじゃないのか?」



そう言う宗吉だが、俺は納得いかなかった。

だって確かに居たんだあいつは!土橋 悟は!俺と宗吉の中学からの友人は!

俺はあまりのこの突然の出来事で、訳が分からなくなり、その場に立ち尽くした。



「あ、おい!ヒロ、大丈夫か?」


「‥‥‥そんなことあるかよ‥‥‥そんなことあるかよ‥‥‥」


「ヒロ!」

「お兄ちゃん!大丈夫?」

「先輩!」


「そんなこと‥‥‥あるかよおおお!」



俺は叫んだ。あまりの理解が出来ない出来事に。まるで、俺しか知らない出来事の様な事に。

そんな俺に周りが驚き俺を見る。

そして、その時彼女が、朝日 ヒロミが俺の視界に入った。

俺は彼女に気づくと、いつのまにか彼女に向かって、ゆっくりと歩いていた。



「あ、あの‥‥‥」


「‥‥‥ちょっと付き合ってくれ」



俺は彼女の前に立つと、戸惑う彼女の手を握り彼女をその場から連れ出した。



「あっ!お姉ちゃん!」

「お兄ちゃん!」

「先輩!」

「ヒロ!」



みんなの前から。

そして、誰もいない体育館の裏に連れ出した。





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