勘違い その2

彼女が最初、何故怒っていたのかわからなかった。

それはそうだろ!一年ぶりに会えたんだ!

もう二度会えないと思っていたから。

彼女に会えた事だけで、頭がいっぱいになっていたから。


で俺は、少し気持ちを落ち着かせて考えたら原因が漸くわかった。

俺の左腕に絡みつく、自称美少女の妹、明美を彼女と勘違いしたのだと。


彼女、朝日 ヒロミ(女)はいわば俺自身なのだから。

俺が女の世界の女性なのだから、考えは見当がつく。

多分、彼女の早とちりだろう。



「俺も良く早とちりするからな」



俺がそう思いながら、クスッと笑うと隣に居た妹の明美が不思議そうな顔をして



「どうしたの?お兄ちゃん?」


「うん?ああ、仲直りできるかなって」


「さっきの人と?」


「ああ」


「けどお兄ちゃん、あの人とは初対面よね?」


「うん?ああ、そうだな」




そう、彼女とは初対面。この二つの世界が融合した世界では初対面。

けど‥‥‥俺は彼女を知っている。彼女も俺を知っている。

あの一年前のあの日から。

だから‥‥‥



「謝りに行く!俺は謝りに行くよ!」


「えっ?誰にお兄ちゃん?」


「うん?ナイショ」



俺がニコリとそう明美に言うと、明美は不貞腐れた様に頬を少し膨らませて俺を上目で見てきた。

俺は明美の頭にまた右手を乗せると軽く撫でた。



「うううっ〜、お兄ちゃん、私はお兄ちゃんのなでなでで騙されないわよ‥‥‥あ〜♡やっぱりお兄ちゃんの頭なでなで気持ちいい〜♡」



明美はまるて猫が甘える様に俺に絡みつく。 俺は顔を上げ、何かを決心したかの様に正面を向くと、



「明美!駅に急ぐぞ!」


「えっ!お兄ちゃん!」



俺と明美は駅へと、足早に向かった。




◇◇◇




駅までの歩いている間、私は気持ちを整えていた。

私はなんでいつもこうなんだろう、と心の中で思っていたから。

確かに妹の日和ひよりに言われるとおり、私は早とちりのドジっ娘かもしれない。


けど‥‥‥なんなんだろう?

私の心の中で、何かがモヤモヤしている。

こんな気持ちになったのは初めて。

それはどんな気持ちか、

ただの不安?違う、ただの安心?それも違う、じゃあなに?



「信頼‥‥‥そう!信頼されていないのではないかと言う不安な感じ!」


けど‥‥‥彼、朝日 ヒロミ(男)は必ず私の所に来る。(ちょっと不安だけど)

だって、あの人は私が男だった世界の男の人。

もし、私なら‥‥‥私なら‥




「お姉ちゃん?‥‥‥お姉ちゃん!、なに一人でぶつぶつ言っているの?」



日和が私を心配そうに見つめる。

私はそんな日和に、とぼけた様な顔をすると



「えっ!な、なんでもないわよ!うん!なんでも」


「え〜っ!本当に?」


「ほ、本当よ!」


「お姉ちゃん、あのさっきの人に惚れた?」


「な///なにを言っているのよ///」


私は日和に顔を見られない様に、わざと日和とは逆の方を向くと、日和はうっすらと笑みを浮かべ、それが急にニタリとする。



「あやし〜なあ〜(笑)、お姉ちゃんてさあ昔から顔にすぐ出るんだよね〜(笑)」


「えっ!///えっ!///」


私は両手を顔にペタペタと慌てる様に触ると、日和は、そんな私を見て笑いだす。



「あははは。嘘よ、嘘!。お姉ちゃんていつもわかりやすいよねえ」


「もお〜///日和!からかわないでよ!」


「ゴメンね、お姉ちゃん。けど、もしあの人に一目惚れしたなら、私応援するね」


「日和‥‥‥」


「だってあの人、少しカッコよかったし。なんなら私の彼氏にでもしちゃおうか‥」


「絶対にそれはダメーーー!」


「嘘よ♡お姉ちゃん」


「もう〜///」



妹の日和に私はからかわれながら歩いていると、少しは落ち着いた感じがする。

そして、しばらく歩くと、私達の前に駅が見えてきた。

あの駅から、私はあの人とこれから学校に登下校するんだと思うと、胸が熱くなってきた。












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