第33話 黒幕
「くっ!」
KDの声にいち早く反応できたからか、何とかかわすことに成功。
國松の一撃は空振りに終わった。
「ほう……今のをかわすか」
「な、何をするんですか先輩!」
驚きのあまり声がでかくなる。
「剣人、あいつはお前が知っている副会長じゃない。今の奴は此処の研究員の一人ラグーンズの副所長としてのあいつだ」
「その通りです。そこまで知っていたとはあなたは何者です?」
「ただの情報屋さ」
「情報屋にしては潜入がご上手ですね。親衛隊? らしき人たちも選りすぐりのエリート集団だそうではないですか」
「ま、グレードの高い情報屋ってとこだな」
「……先輩が殺戮組織の仲間だなんて……」
にわかにも信じがたいことだった。
そんなことはありえないと自分の中で収集がついていなかった。
「剣人、お前は装置へ行け。ここは俺に任せろ」
「……」
「剣人!」
「はっ! 俺は……」
「ぼーっとしてたら死ぬぞ! お前にとっては信じたくない真実かもしれないがこれが現実なんだ。それより今はやるべきことがあるだろう?」
「くそっっ!」
俺は唇を噛みしめながら装置の元へ。
だが、彼らは止めようとしない。
なぜだ? なぜ止めない。
すると國松が、
「あ、ちなみに言っておきますがプログラムと彼女の分離は不可能ですよ」
「なに!? どういうことだ?」
「亜理紗はもう運命を決めたのですよ。プログラムと完全に一つになると……」
「そんな……でもまだ彼女は……」
「来るのが遅すぎたんですよ。あなた方は」
「遅すぎた……だと?」
「彼女は期待していた。モルモットである金山剣人、君にね」
「俺に……?」
「君は彼女を救う唯一無二の存在だった。同じモルモットにしか扱えないそこにある装置で君の生命エネルギーを分け与えれば、彼女の身体には負荷がかからずに救えた。そこにいる情報屋さんもそれが目的だったのでしょう?」
「くっ……なにもかも知っていたということか」
少し焦ったような表情を見せるKD。
「嘗めないで下さいよ。我々の計画のために障害は取り除かなければいけません」
「お前たちは何をしようとしている? 計画とはなんだ!」
俺は、今一番聞きたいことを彼にぶつける。ずっと疑問に思っていたことだ。
「復讐だよ」
話に割り込むように城岩が入る。
「復讐だと?」
「ああ、この腐れきった国に対してのな」
「『移民化計画』でのことか?」
「ほう……なぜそれを? ああ……そこにいる情報屋か」
「ふざけんなよ! こんなことをして許されるとでも思っているのか!?」
「許す? 誰がだ? この計画が成功すれば私たちに指図できるものはいなくなるさ。この技術は国にとって金になるのだからな」
「なら俺がその計画を止めてやる! たとえこの身体を犠牲にしてでも!」
俺は装置のスイッチに手をかける。
当時、俺はなぜここまで熱くなったのか分からなかった。でも亜理紗を救いたい、夢に出てきたような彼女の悲しい顔を見たくない、そんな感情が俺の中であったのかもしれない。
「存分にやりなさい。まぁ結果は見えていますがね。あなた……死にますよ?」
「やめろ剣人! 今度はお前がどうなるか分からない!」
「父さん……俺は覚悟を決めて此処に来た。こんな所で引き下がったら男が廃る。それに俺は……天才共に凡人で何も取り柄のなかった男にもできるんだ、天才共にだって凡人のわがままが通用するんだっていうことを証明したい!」
「剣人……」
「俺はやる……不可能を可能して見せる!」
「ははははは! なんと威勢のいい子だ。死も恐れないその覚悟は称賛しよう。でも少年よ、無理な時は無理なんだということを理解した方がよっぽど頭がいいと思うがね」
「お前ら天才の意見はそうなのかもな」
「なんだと?」
俺は装置のスイッチを押し、認証用バーコードに手を翳す。
「見せてやるよ、凡人の底力!」
認証完了の文字が浮かぶ。そして装置は大きな音を立て、俺は吸い込まれるように装置の中へ。
(なんだこの力は……!)
重くのしかかる重力に押しつぶされそうな勢いで俺の身体はぐんぐん沈んでいく。
俺はその圧に逆らおうとするも身体が思った通りに動かない。
(く、くそっ……)
俺は抗うことすらできぬまま意識を失ってしまった。
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