ボク物語~それは阿佐ヶ谷住宅から始まった~

あきら・ド・クリエ

第1話 序章

 2015年から令和元年を迎えた現在は、私の人生においてもっとも辛くしんどい時期であると言ってもいいだろう。そして、今なお光明をまったく見いだせないまま、私の精神は闇の中を依然としてもがき続けているのだ。借金がない事と詐欺まがいの事に手を出していない事だけが、ちっぽけな自慢である。


 いろいろな出来事があった。思い返せば、あっという間に何十年もの歳月が、たれ流されたように経過したとつくづく思う。「良き想い出」でもあり、それを余裕で上回るほどの「懺悔と後悔」でもあった。


 久々に杉並区内へ住居を移すこととなった。大宮八幡宮や善福寺川にほど近い住宅地のど真ん中である。周辺の地理は心得ていたつもりが、路地があまりに複雑過ぎて、自転車で走るたびに毎回迷子になったり道を間違えたりを繰り返し、慣れるまでに数か月を要した次第である。


 地下鉄丸ノ内線の南阿佐ヶ谷駅から、南へ向かって細い路地を真っすぐに進んで行くと、住宅地を抜けてブチ当たった先に、ひときわ新しくて高級な低層マンション群が立ち並ぶ。「プラウドシティ阿佐ヶ谷」といい、築年は2016年3月、価格帯は6~9千万あたりらしい。私が以前に住んでいた葛飾区のJR駅前の新築マンションの、およそ2倍の価格である。かつて、この場所に「阿佐ヶ谷住宅」が存在していた事は団地マニアには有名な話だそうだ。私は何年か前まで「阿佐ヶ谷団地」が正式名称と思っていたし、その昔に私の両親もそう呼んでいたはず。昔から建て替え計画があったらしいが、とうとう2013年中旬に取り壊されて、跡形もなくなった。そういう私は団地マニアでもなく、この建物の取り壊し決定後に慌てて現地へ写真撮影に赴いたわけでもない。


 この地域に関しては、もはや別段に興味もないのだが、私自身の記憶に鮮明に残る懐かしき平和な日常、これだけは紛れもない事実なのだ。


 初代の仮面ライダー、スペクトルマン、ミラーマンが放映されていた時代、私は「阿佐ヶ谷住宅」の住人だったのだ!

 私が元気なうちに、生涯の出来事と懺悔の記録を活字に残すことにしようか。

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