第3話

 具合の悪い魔王(夫)は夕飯を済ませると家での任務(娘のお風呂と寝かしつけ)を放棄してそそくさと寝室へ向おうとする。


「この魔剣、出しっぱなしにしないで。しまって」


「はい」


 魔王(夫)は魔剣をクローゼットにしまう。


「クローゼットは開けたら閉める!」


「はいっ!」


 クローゼットをいつも閉め忘れる。

 家来(鬼嫁)はクローゼットを閉める係ではありません。家来だけど。



 無事寝室へ入れた魔王(夫)はあっという間に眠りに落ちる。お布団大好き。出来れば出たくないタイプ。



ZZZZZ……




「ぐほっ!」



 深い眠りを引き裂くように、魔王(夫)のミゾオチに激痛が走る。


 クソッ!勇者か!?寝込みを襲うとは、なんて卑怯な勇者だ!しかも具合が悪いところを狙ってきやがった……


 痛みを堪えて開く魔王(夫)の目に映ったのは、魔王(夫)のミゾオチに深々と突き刺さる娘(勇者?)の踵。


「え?」


「ぐほっ!」


 右踵も振り降ろされる。




 そのころ家来(鬼嫁)はリビングでワインを飲みながらTVを観ている。


「ふほほっ」


 自分の手は汚さない。

 それが家来(鬼嫁)の流儀。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る