第8話 前進

俺が話をしている間、秋咲は真剣な顔をしながら聞いていた。俺はそれが嬉しかった。

過去について話し終えたあと、更に続けた。

「けれど、俺はこの間困っている秋咲を見て助けたいと思った。誰にも関わらないと決めていたのに、関わろうと思ってしまった。

それは誰かに言われた訳でもない純粋な気持ちだ。その気持ちを、また取り戻せたことがとても嬉しい。

秋咲は自分が救われたと思っているかもしれないけどお前だけじゃなく、俺も救われたんだ。ありがとう。」

これは本心だった。こんなことがなければ、俺は前に一生進めなかっただろう。すると、顔を赤らめて秋咲は言った

「ふ、ふぅん。そんなことがあったのね。ま、まぁね、その件については感謝しなさいよ!」

話の量に対して感想少なすぎじゃ.....ってかそのキャラ戻ってきたのか......。

「おう!けど俺はまだほかの人と関わる勇気がない。だからマスクとメガネをして、今までどおり行くから、秋咲の為にも俺には不用意に話しかけるな。」

「わかったわ....」

なんか一瞬悲しそうな顔したような.....それにても秋咲顔赤いな、目も合わせないし.....もしかして俺に惚れたのか?いやないな。今の俺には魅力のかけらも無いしっとまぁいいや。

「それじゃあまた今度、機会があれば話そうな。」

まぁ多分ないけど。

そう言ってコートから出ようとするとTシャツの裾をクイッと掴まれた。振り向くと秋咲は俯いている。

「ん?どうした?」

そう聞くと、秋咲はモジモジして言った。

「ぁ.....ぁの....」

んんん!?なんでこんなにキャラコロコロ変わるの?しかもすげぇ可愛んだけど....

赤面して恥ずかしそうにしてる秋咲を見て思う。

「なんだ?あっ父さんの話か?大丈夫それは俺が何とかしておくから。」

「あ、ありがとう!でもそうじゃなくて....モジモジ」

「ん?」

「ぁ....ぁんたに....モジモジ」

「ごめん、よく聞こえな────」

「あんたに負けたんだから仲良くなるよう努力するって言ってんのよ!!学校では話せないからはいっ!これっ!」

「お、おう...」

急に声が大きくなってびっくりした。そして秋咲が差し出したものを見た。大手のSNSアプリ『Linu』のQRコードをうつしたスマホの画面だった。おれは、素直にLinuを交換しておくことにした。

交換し終わると

「ま、また連絡するからっ!」

そう言って小走りで去っていった。


ん、ん〜?女子ってよくわかんねぇな、コロコロキャラ変わるし。まぁよくわかんねぇけど、あいつ可愛すぎだろ....

去っていく後ろ姿を見て俺はそう思ったのだった。


────────────────────


「むふふ.......」

私、秋咲唯未は探君とのトーク画面を見て、ニヤついていた。

まだどちらもメッセージを送っていない。

これから仲良くなる努力頑張るぞぉ!そう思いながら何を打とうか迷う。迷っているうちに『今日はお疲れ様。お前のお父さんの件なんとかしといたぞ。』とLinuが来た。しまった。ずっとトークを開いたままで既読を一瞬でつけてしまった。

あわわ....とあたふたしながら今日のことを振り返る。濃い一日だったなぁと思う。正直中学の時の話を聞いても私にとって手の届かない存在であることに変わりはなかった。

そして、1日で、完璧に心を掴まれた。

彼は自分が思う理想像そのものであった。


はぁ、なんであんなにツンツンしちゃったんだろう。探君に甘えたいのにできなかった。

いつかデレデレしたいなぁ...なんて...ぐふふ




はっ!

回想に入って気づいたら10分たっていた。早く返信しないと....



そこには、いつものようなクールで冷静沈着な彼女はどこにもいなく、恋する乙女がいた。


そして、返信完了するまでに1時間もかかるのはまた、別の話である。


────────────────────


こんにちは。嵩いの李です。皆さん、いつも読んでくださって、本当にありがとうございます。

レビューやいいね、コメントして下さりますと、とても喜びますし、モチベーションがすごく上がります。質問等もお待ちしております。

毎日投稿を心がけておりますが、嵩いの李は現役高校三年生受験生なので、やむを得ず投稿できない日もあります。何卒、御理解お願いします。

これからも『ラブコメ主人公は爪隠す』をよろしくお願いします。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る