第26話 遊園地デート3 昼食
《樹》
俺も部活無かったら行きたかったぜ。観戦者としてこっそりと観に。
《蓮地》
じゃあ、部活頑張れぇ
《樹》
すいません。俺一人取り残された気分で地味に嫌み言っただけなんです。消えないで。
《蓮地》
それは、何かごめん。
じゃあまたいつか皆で行こうよ、何処か。
《樹》
おう!蓮地は女子三人の組とのデート頑張れよ
《蓮地》
それってデートなの?
《樹》
デートだろ…多分――
女の子三人が相手のデート。一人は妹ですけど、とりあえずデートにしておくことにします。
遊園地を周り始める前に昼食を取ることにした僕達はフード店の四人席に座って、誰が注文して受け取りに行くか、その間席で待っておくかをグーパージャンケンで決めることになりました。
因みにパーが注文班、グーが待機班です。
ジャンケンは僕とのペアを賭けた争奪戦となりました。
その間僕は菩薩となり三人を見守る形で参加し、結果注文班が僕と鈴、待機班が江菜さんと雪になりました。
待機班になった二人は不服そうな顔で鈴を睨み見ると、鈴は煽るようにドヤ顔を見せつけました。
背筋がヒヤッとした僕は鈴を連れて注文待ちの列に並びに行きました。
好きな人を取り合うと恐ろしい事を僕は身を持ってこの時実感しました。
同時に依頼をしてくれた人以外にもその人が好きな人は何処かにいた事を僕は改めて考えさせられた。
でも、僕は後悔はしていません。
だって恋愛って本当に争奪戦みたいなものですからね。僕はその中の一人に依頼されて背中を少し押してるだけの本当にアドバイス等の応援程度。
そして、依頼人はアドバイスを上手く使って、恋戦に勝ったというだけ。
もし、負けたなら?
その時は僕はちゃんと祝福しますよ。それで、依頼してくれた人には、場合によりますけど謝罪します。
僕は本当の意味で理解はしていないですけど、本当に好きなら、その人の幸せを願いますよね。
当然、自分が幸せにしたかったっていうのはあると思います。
もし、それとは別で、自分の方が相応しいとか吊り合うわけがないなんて思ってるのは恋とは違う。
それは只の所有欲って僕は思ってます。
ブッブー
なんて考えているとスマホにメッセージが送られてきました。
送り主は江菜さん。内容は江菜さんと雪の注文メニューです。
テーブルにメニュー表が無かったのでカウンターの奥に立て掛けられているメニューの写真を送ったわけです。
「江菜さん達決まったの?」
腕に密着している鈴は上目遣いで僕に聞きました。その表情は、にやにやと緩みきっています。今にも頬擦りするんじゃないかってくらいに。
「江菜さんはチーズバーガーセットで、雪はフレッシュトマトバーガーセットだって」
「王道だね江菜さん。やっぱり初めてだからなのかな?」
「みたい、メッセージの所に確り注文理由が書かれてる」
「律儀だね」
僕は「だね」と鈴に笑顔で言いました。
「お兄ちゃんはどうするの?」
江菜さん達にメニュー板の写真を送ってから三分、僕はメニュー板とにらめっこを続けています。
その度に真ん中に立て掛けられているメニューが気になって見ているんですけども。
あ、鈴はホットドッグセットだそうです。
「お兄ちゃん気になってるなら頼んだら、ミニマム&ビッグバーガー」
仕方ないなあという表情で鈴に指摘を受ける。
この怪しげなバーガー名、多分ワンダーランドエリアなのでアリスに因んだ物にしてるんだと思います。
小さくなるケーキと大きくなるケーキ。
一つは小さいサイズなのは分かります。僕が悩む要因の種は大きいサイズ。
だって、見渡す限り注文したような人を見かけないんですよね。一体どんなサイズなのかが頼むのが怖く、同時にそれに好奇心を覚えて只今、心境は大変複雑です。
「お兄ちゃん、残念だけどタイムアップ。レッツ即決タイム。私は頬擦りタイム」
それって注文しよって言ってるよね鈴!
そして、本当に頬擦りを始めましたよ。
まあ…良いんですけど。
悩んだあげく、結局僕はミニマム&ビッグバーガーさんを注文することにしました。
◇◇◇
蓮地さんと鈴奈ちゃんが注文待ちの列に並んでから十分程してCOMINEに三枚の写真が送られてきました。写真は全てメニューでした。私はチーズバーガーセット、雪はフレッシュトマトバーガーのセットに決めてメッセージを送りました。
「送信完了」
「王道に走ったんだ、江菜」
「初めてのハンバーガー…だから」
「……ねえ、江菜って普段何食べてるの?」
躊躇いながらも性格上聞くことを止められなかった雪でした。
「時に母様の、時に蒿田の料理ですね」
蒿田の場合は忙しい時と休日のみで、殆ど母様が作っております。
というのも母様が料理好きでそれ以外の家事は蒿田やメイドの方々に引き受けてもらっているのですが料理だけは譲らないのです。
休日は渋々承諾したようなので納得はしてないと思われます。
「趣味越えてるね」
「そうで…ね」
昨日今日では砕けた口調は慣れません。両親にもこれですから。
やはり、慣れた口調が一番。
ですが、楽しいので努力します。
「次は私が質問してもよろ…良い?」
「その前に江菜、一つお願い聞いてもらっていい?」
雪は真剣な面持ちで訊ねした。
「ええ、良いけど」
勿論可能な範囲で、ですけれど。
「可愛いから抱きついてもいいかな」
そう言って雪は私の両手を握り距離を縮めてきます。因みに雪とは隣合わせで座ってます。
可能な範囲ですけど、これは周りを気にすると少々困ります。
「あの、雪」
困っていると助け船が来ました。
「雪、江菜さん困ってるから止めなよ」
と呆れた表情で蓮地さんが雪に止めるよう促してくださいました。
蓮地さん呆れるんですね。
「江菜さん、今変なこと考えました」
蓮地さん鋭い。
私は「助かりました」と本音の中に本音を隠して言いました。木を隠すならというものです。
この場合嘘で隠すべきなんですけど。
お礼の次いでについ。
「それで蓮地さんそのハンバーガーは」
蓮地さんと鈴奈ちゃんは注文の商品を持って、。
来たの…ですが、
「江菜さん、聞かなくてもいい事って世の中にあるの知ってます?」
顔は隠れて見えませんが、困った表情をしておられるのが浮かびます。
蓮地さんが両手に別々の商品を乗せたトレーを持ってこられ、片方は私が注文したチーズバーガーセット、もう一つは厚さ2,3センチ程しかないミニマムバーガーで、隣は対称的に15センチ程のロングバーガーと驚きの商品です。
周りの人も蓮地さんのハンバーガーを目の当たりにして唖然としています。
「食べるんですね」
「食べるんです」
蓮地さんは両手に持つご自身のものと私のチーズバーガーセットをそっとテーブルに置いてレジカウンター側の席に着きました。
さて、私の予想というか起きて当然のイベントがこの後起こると思います。
「江菜、鈴奈」
「望むところです」
「仕方ありません…彼女として負けるわけにはいきませんので」
「それはこっちのセリフですよ。妹として負けられません」
「私は幼馴染兼本命彼女候補として」
言いますね。その売り言葉、あえて買いましょう。
「「「せーの、ジャンケン…」」」
「やりました!」
結果は私の勝利。蓮地さんの隣を勝ち取りました。
「パーを出してれば勝てた」
「ぐぬぬ、まだお兄ちゃんの向かい側がある」
「悪いけど譲らないよ、鈴奈」
「それはこっちのセリフ」
どうやら向かい側の席を賭けての勝負をやるようです。
「蓮地さん、飲み物飲まれますか?」
「はい。いただきます」
「余裕だね、江菜」
「勝者ですから」
二人とも悔しい表情で私を見た後顔を合わせあいました。
「「もう一勝負、ジャンケン…」」
「幼馴染の勝ち、何で負けたか明日まで考えてね」
「ぐぬぬ、妹が…妹が負けるなんてぇ」
という訳で蓮地さんの隣が私、向かい側を雪が、雪の隣に鈴奈ちゃんという席位置に決まり、昼食を摂りました。
◇◇◇
並んでいた時間、三人の席争奪戦の時間などもあり食べ終わった時間は午後2時となっていた。
一時間前だし行った方がいいかな。
「ん〜……皆何処行く?」
満足した顔で伸びをしながら雪は言いました。そこに僕は提案を口にします。
「実は15時に各エリアでパレードがあって良いところで見たいから場所取りに行きたいんだけど、どうかな?」
「良いですね。私は氷河期エリアのを見てみたいです」
「私はここのワンダーランドパレード。メルヘンで可愛いのを期待」
「私はお兄ちゃんが行きたいところ。でも、希望するなら白亜期エリアの。迫力ありそう」
と賛同する前に既に江菜さんも雪も鈴も何処のパレードを見たいかを考え始めました。
「でも、やっぱり」
「うん、だね」
「当然」
でも、直ぐになにやら三人とも一言だけで意志疎通をして頷くと、僕を見ました。
僕は何となく三人が何を言うおうとしているのか分かった気がします。
多分、
『僕が行きたいパレードに行きたい』
「蓮地さんが行きたいパレードに行たいです」
「蓮が行きたいパレードに行く」
「お兄ちゃんが行きたいパレードに行きたい」
予想通りのセリフで僕は思わず笑ってしまいました。
「あははは!」
何で笑っているのか分からずに目をぱちくりさせて三人ともきょとんとしています。
さて、何処のパレードに行こうかな。
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