第3話 私なんか大っ嫌ぃ!



「ケホッ、ケホッ。

 まったくぅ~酷いじゃないか!こんなか弱くて幼気な妖精の首をあんな急に、しかも雑巾みたくギュウギュウ絞り上げるなんてさ」


「ごめん。。。なさい」


「もうちょっとで、ボクの一番搾りが出ちゃうとこだったんだからね!ギリギリのギリギ位だったんだからね!」


「。。。。。。」




 ソイツはぎりぎりだったと言いながらも、全然ケロッとしていた。

 それはそうだった。腐っても魔法少女を生み出す妖精バケモノ、ソレをただの小4な女の子が絞り殺せるはずはない。




「まぁ。。。ボクも色々配慮が足りなかったのは、悪かったよ。ビックリさせちゃったよね?ごめん」


「あの。。。お姉ちゃんの最期の言葉って。。。」


「え?あぁ、そうだね。そうだった。

 君は知らないだろうけど桃っち、君のお姉さんは


 鮮血色の戦乙女クリムゾン血塗れ桃ちゃんピーチ


 だったんだ。。。驚いたかい?」


「。。。知ってた」


「そうだよね。。。桃っちは誰にも言ってなかったし、急にこんな事言われたら無理もな。。。えっ!!!?知ってたの!?なんで?いつ、どうして!!!?」




 あれは本当にたまたまだった。

 2年位前、何と無く見たテレビの魔法少女特集。そこにチラッと映った女の子を怪人から助けたクリムゾン・ピーチは、怪人に向かってこう叫んでいた。


『こんな小さな子供にまで酷いことするなんて。。。絶対。。。許さない!!!』


 魔法少女なら皆言いそうな言葉。

 でも私にはそのを聴いた時、電気が走るみたいな衝撃があった。お姉ちゃんの。。。声?

 それが確信に変わるまで、そんなに時間はかからなかった。




「それはどうでもいいよ!それより、お姉ちゃんはどうして。。。なんで死んじゃったの?なんて言ってたの。。。?」


「。。。そうだね。

 桃っちは、本当にスゴい魔法少女だったんだ。まるで魔法少女が魔法少女をやってるみたいに完璧で、そして他のどの魔法少女より強かった。


 まぁでも戦い方だけは、大分ちょっと過ぎていつの間にか呼び名が、『魔女ッ子プリティ桃ちゃん』から血塗れ桃ちゃんクリムゾン・ピーチに変わっちゃったんだけどね。。。


 でもそれぐらい君のお姉さんはスゴかった。

 だけど昨日の桃っちは、なんだか様子がおかしかったんだ。。。」




 ************




「怒り荒ぶる雷帝よ、断罪の鉄槌を振り下ろし紅き雷鳴を以って敵を討て!!!

『断罪雷轟・紅(サンダーストーム・クリムゾン)!!!』」


「ウワァ!!!ちょっと桃っち!

 魔法少女は、どんなを殺る時もだよ♡

 がモットーなのは知ってるけど、流石に開幕ブッ放はやり過ぎだよ!いくら桃っちでも、こんなに敵がいたら魔力が。。。」


「大丈夫大丈夫♪全然余裕だって。

 それに、今日はちょっと急がなくちゃいけないの。。。」




 最初は、トイレを我慢してるのかと思ったんだ。。。

 でも桃っちは急いでいるって言うよりも、焦ってるみたいだった。最初から強力な範囲攻撃をバンバンブッ放して、逃げ惑う怪人達の頭をクリムゾン・ハンマー魔法の杖でガンガン潰して、完全にいつもの慎重さと冷静さを欠いていた。


 だから戦いが終わった後、まだ殺しきれていなかった怪人の最期の弱攻撃なんかで致命傷を負ったんだよ。




 ************




「桃っちの右のポッケを見てごらん?」



 お姉ちゃんのズボンのポッケには、綺麗にラッピングされたお揃いの小さなハートの付いたネックレスが入っていた。


 もぅ、ぉ姉ちゃんの最期の言葉を聴くまでも無かった。。。




「。。。。。。桃っちはボクにそのプレゼントを頼んで、最後にこう言ってたよ。


『みぃちゃん。。。お誕、生日。ごめん、ね。。。。。。』


 」




 そう。。。お姉ちゃんが死んだのは、怪人のせいでもこの妖精のせいでも無い。

 私のお姉ちゃんを殺したのは、殺したのは。。。。。。私。




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