思っていたより…(2)

なんとか支払いを延長させて貰い、現在全力で街を駆けております。銀貨1枚…日本円にして大体千円ちょいを稼ぐ為に街の中心にあるという《ギルド》に向かっております。え?ギルドとは何かって?大雑把に言ったらハローワークだよ。仕事を探しに行くんです。

「はぁ……はぁ……。」

ごめんもう解説してる体力無いわ。チヅレは嬉しそうに後ろに着いてきてるけど……。そんな訳で新たな世界での2日目が始まりました。


「当ギルドへいらっしゃいませ。依頼ですか?それとも受注ですか?」

「えっと、受注で。」

まるで市役所の様なギルドで、とても騒がしい。私の様に仕事を探しに来ている人や、仕事の依頼をする人、後はお酒を飲み馬鹿騒ぎしている人達で溢れている。ギルド内の約八割の人には頭上に数字が浮かんでおり、情報収集にももってこいの場所である。

「なるほど、では少しお待ちください。」

私の頭上の数字を見て、棚から数枚の書類を持ち出し私に提示してくる。

「現在提示出来る仕事はこちらになります。」

書類にはそれぞれ仕事内容、備考、難易度、依頼人の名前、報酬が表示されている。私の受注できる仕事はそれぞれ、

「薬草の回収 ★

街の外れにある森の周辺に生えている『ミルソウ』を採集。麻袋1つにつき銅貨4枚。麻袋5つで1つにつき銅貨5枚に増量。最大5つ。

ギルドからの依頼。」

「フォレストウルフの討伐 ★★★★★

街の外れに位置する森にフォレストウルフの群れを確認。フォレストウルフ1匹討伐につき

銅貨8枚。討伐数は証明となる毛皮を提示。その後の毛皮は1枚につき銅貨2枚で買取。

ギルドからの依頼。」

「ペットの捕獲 ★★

クインの街の貴婦人のペットが屋敷を逃亡したとの事。詳細はクエスト受注後、記載の場所に在住の貴婦人に話を。発見した場合銀貨2枚、受注日に発見した場合は銀貨3枚。

シャネル貴婦人からの依頼。」

星の数が多いほど難易度が高いとのこと。

私には仕事を選ぶ余裕はないので取り敢えず、薬草の回収とペットの捕獲の依頼を受注する。

「かしこまりました。ご健闘をお祈りしております。」

仕事を受注すると麻袋が5つと、貴婦人の場所を示しているであろうメモを渡される。深々とお辞儀をし、稼ぐ為にまずはシャネル貴婦人の所に向かった。


「まぁ!ワタクシの依頼を受けてくださったのですね!シャネルと申します、以後お見知りおきを。」

「成瀬優希です。こっちはチヅレ。よろしくお願いします。」

気品のある叔母様といった印象の女性。早速仕事の詳細を聞き出す。

「2日も前の事よ。ワタクシの飼っているマリーちゃんと散歩している途中にいなくなってしまったの。執事達と探したのだけれど見つからなくて……。」

「なるほど、そういう事でしたか。お任せ下さい、必ず見つけ出します。」

「わんっ!」

自信満々にそう言って見せた。何を隠そう、この依頼に関してはとっておきの秘策があるのだ。

「シャネルさん、何かマリーちゃんがよく身に付けていたものなど御座いませんか?」

キョトンとした顔で話を聞いていたシャネル貴婦人。そういえばと立ち上がり、部屋から姿を消したと思うと、赤のリボンを持って戻ってきた。

「少し前までマリーちゃんが付けていたリボンよ。これで大丈夫かしら?」

「十分です、ありがとうございます。」

赤いリボンを拝借し、それをチヅレに差し出す。チヅレはそのリボンを嗅ぎ、こっちだと催促する様に外に出て、地面を嗅ぎながら少しずつ進んでいく。

「ではマリーちゃんの保護に行ってきます。安心してお待ち下さい。」

「ならワタクシの執事も連れて行って。少しは力になれると思うわ。」

コクっと頷き、チヅレの後を追う。するとやがて細い路地に入り、立ち止まる。

「わんっ!」

この辺りから匂いがするのだろう。そう捉えた私は執事さん達に捜索をお願いする。そして。

「発見しました!正真正銘、マリーちゃんです!」

奥の方からそのような声が上がる。チヅレを抱き上げ、声の方へと進む。そして捕獲されたマリーちゃんの元へ辿り着く。

「え!?」

マリーちゃんの姿を見た私は歓喜の声よりも先に、驚愕の声を上げてしまった。

「へ、へ、へ……ヘビー!!!」

私の苦手な動物ランキング1位 ヘビ。


「こちらが報酬の銀貨3枚になります。お疲れ様でした。」

「ありがとうございます。」

報酬を受け取り、早速宿屋に向かおうとする。そこをギルドスタッフに呼び止められた。

「ど、どうかしましたか?」

悪いけどこちらはあまり話を聞く気力はない。出来るだけ手短にお願いしたいものだが。

「先程の依頼解決、感服致しました。そこで是非ギルド登録といったものをして欲しいのですが……。」

「あっ、はい。」

なるほど、予想だがギルド登録をしておけばより多くの仕事が回ってきたり、様々な特典が貰えるのだろう。そう考えた私は2つ言葉でオッケーを出した。

「ではここに名前を。ではギルドカードを発行致しますので、銀貨1枚となります。」

凄いデジャヴ。もう笑うことしか出来ない。

スタッフさん、私は貴女のその仕事ぶりに感服だよ……。と、心の中で思うのであった。

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