第3話

 改めてTwitterを確認すると、いいねが200を超えていた。


「やったー!」


 久々の200超えだ。しかもオリジナル絵で。明日も仕事だけど知るもんか!と小躍りしながら冷蔵庫の扉を開けて、ビールの缶をぷしゅりと鳴らす。


 部屋に戻りつつスマホを見ると、また通知が来ている。よくコメントをくれる人からだ。「尊い」頂きましたあざーっす!!うわーんあなたのコメントも尊いですよマジです!!


 31歳実家暮らし独身女。日中は営業の仕事で瀕死寸前。そんなどうしようもない日々を埋めるように、夜になると自分の部屋で絵を描き始める。こんな学生生活送りたかったな!!!こんな愛され系女子になりたかったな!!!と痛い妄想を思い切りぶつけて。


 それなのに、こんな風に喜びの反応をいっぱい貰えるなんて、とても幸せなことだ。


 正直営業で案件を取れたときよりうれし……なんて、口が裂けても言えないけれど。ただしTwitterでは書いたことがある。上司にバレないかしら本当に。ビクビク。


 ほろ酔い頭でタイムラインをスクロールしていく。自分がフォローしているのは、やはりほとんどが絵描きさんだ。美しい背景だったり、劇画調だったり、自分には逆立ちしても描け無さそうな絵を見かける度に嘆息していいねを押す。そして自分と近い方向性の絵柄を見かけると、あーこの人の目元の描き方上手いなーと凹みながら、1232番目のいいねを押す。


 あーくそー、自分もオリジナルで何千いいねとかもらいたいよーー!!



   わたしたちは 画面を通して指を触れ合わせる

    指先で あなたとわたしは つながっている



 知らない誰かの書いた詩が、リツイートで回ってきていた。へえ、いい詩だ。まさに今の気持ちって感じ。いいねを押してもらい、いいねを押してあげる。指と指、ET的な。


 ハートマークをタップして、せっかくだから、とリツイートボタンも押した。この指先の気持ちよ、もっともっと、別の誰かに届け!なんて。


 そっか、焦らなくてもいいね。指先で繋がっているファンがいるんだから、自分には。それって、だいぶ、すごくない?既に200人も密なお付き合いのお客様がいるんですよ!!


 パソコンの前に座り、頬をぱんぱんとニ回叩いた。そんなお客様たちをもてなすために。


「よし、もういっちょ何か描くぞー!」

 

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