第10話~危機を救う聖服~

学校生活が始まり1ヵ月、何日か置きに居なくなる片霧の事が気になっていた。


そして、ある日寮の部屋で遥は思い切って聞いてみた。


「片霧先輩・・夜な夜な何処に行かれてるんですか?」


「巡回かな・・学校の」


片霧が惚けてた様に言うと。


「先輩・・何で巡回から帰ってきたら直ぐにシャワーなんですか?汗かくほど巡回って大変なんですか?」


痛いところを突っ込まれた片霧は困って内線で操に助けを求めた。


呼ばれた操は片霧と何か話しをしてから。


「折原さん、その事は聞かないで欲しいの・・来月には理由が分かると思うから」


遥は操からそう言われて、「分かりました」とだけ答えた。



それからその事には触れなかったが、数日後片霧がいつもと違った調子で帰ってきた。


寝た振りをしていた遥はシャワーから出てきた片霧の肩が黒くなっていたのに気がつき慌てて起き上がった。


「先輩どうしたんですか?」


「ごめん、また起こしちゃったかな」


「そうじゃなくて肩の黒いの・・」


「あ、やっべーまだ戻ってなかったのか・・」


そう言うと肩を抑えて片霧はベットに倒れてしまった、遥は慌てて内線で大和美佐先生を呼んだ。


美佐は無言で部屋に入ってきて片霧の身体を調べ始め、頭を掻きながら。


「折原、聖服を着ろ」


「制服着ろって、先生そんな場合じゃ」


「片霧が気になるんだろう、そうなら着ろ」


いつもの変な美佐ではなく真面目な口調で話す美佐に従った。


「先生、着替えました」


遥が美佐の横に来ると今度は


「折原、私の手を握れ」


美佐はそう言って片手を出したが遥は一瞬防衛本能で躊躇ったがいつもと違った美佐を見て手を握った。


「折原、目を瞑ってお腹に集中しろ」


少しすると遥は下腹部に何か暖かい物を感じ、そして繋いだ手から何かを吸われる感覚になり「あっ」と口にすると


美佐が小さな声で


「折原・・我慢しろ・・そのまま・・」


その感覚が数分続き、美佐が「いいぞ」と言い手を離した。


そのままじっとしていると「折原、目を開けてもいいぞ」と言われ遥はゆっくり目を開けた。


すると片霧の肩にあった黒くなっていたところが肌の色になっていた。


「先生、どうやって」と言ったところで遥は今までに無い吐き気に襲われトイレに駆け込んだ。


少しして事が済みトイレから出てくると、美佐が片霧に布団をかぶせながら。


「折原ありがとな、お前のお陰で片霧は大丈夫だから、まったく帰還検査で誤魔化しやがってこいつは・・」


遥は何が起きたか分からなかったが、今までの溜まっていた思いを美佐にぶつけた。


遥が話し終わると美佐はベットに腰掛、いつもと違う顔つきになり


「折原遥・・そんなに知りたいか?知ると片霧もそしてお前も苦しくなるがいいか・・」


遥は見た事の無い大和美佐を見ながら息を飲んだ・・そして無言で頷いた。


そして美佐は「地球はGBの危機に晒されてる」から始めて現在何が起こっているかを話した。


そして最後に「今から1ヵ月後ある国でバイオハザードが起き数年で地球は滅びる、日本でも起きる可能性はあるが我々はそうならないように守っている、この力が使える人間は数少ない・・そして折原遥にはそれがある地球を守り愛する者を救う力がある・・どうだ手伝ってみないか、もしやらないのなら今聞いた事は記憶から消去してやるから卒業まで頑張って勉強をしろ、卒業まで守れればだがな・・」


遥は途方もない話を聞いて黙ってしまい美佐は立ち上がり入り口へ向かいながら


「今直ぐとは言わん、本来なら来月辺りに正式な話があるはずだったから」


そう言って部屋を出て行ってしまった。



翌日、昨日の話が気になって寝る事が出来なかった遥は片霧に起こされた。


「寝坊なんて、珍しいじゃん」


起こされた遥は寝ぼけながら思い出した。


「先輩、肩は大丈夫ですか?」


片霧は両肩をグルグル回しながら


「大丈夫みたい、こんなに早く治るなんて、流石私」


片霧はガッツポーズをしてみせた。


「実は昨日・・」と遥は昨晩の事を話した。


「なるほど・・じゃ遥が助けてくれたんだ・・ありがとな」


片霧はそう言うと遥の頭をなぜなぜした。


「でも先輩、美佐先生が言ってた事なんですけど・・」


「・・事実だよ、私がやっている事は皆は知らない、生徒で知っているのは天羽先輩と大和さんと後数人くらいかな・・」


「何でそんな危ない事やってるんですか?」


「危ない?危ないけど、出来るのに何もしなのって俺は好きじゃないし・・・それより今日は休みだ、昨日のお礼するからどっか遊びに行こうぜ」


片霧が何かを話そうとしたが話を変え無理矢理遥を着替えさせてしまった。


「遊びって先輩」


・・・・・


そして、ある場所に遥は連れていかれた。


「先輩・・何でバッティングセンターなんですか?」


「何でって、遥が好きそうだし、俺もたまにはって」


そして片霧からスピードの遅い装置でバッティングを始め結果は散々だったが、遥は120kmと書かれた打席に入り少しするとブザーの音とと共に「ホームラン」とスピカーから何度か流れ、慌てた店員が「お客さん、勘弁して下さい」と景品の商品券を渡し2人を追い出してしまった。


「おし、予定通り3000円分の商品券ゲット」


貰った商品券を片手に片霧は言った。


「予定通りって先輩?」


「遥かならやれそうだなって思って、これで今日の昼食食べよう」


遥は確信犯だなと思った。


その後、二人は近くの総合デパートに向かった。


デパートに着くと片霧が時計を見ながら


「遅いなあの二人」


「二人?誰かくるんですか?」


「天羽先輩と大和さん誘ってあるから」


少しすると操が現れ。


「ごめんごめん、ちょっと遅れた」


「大和さんが遅刻だなんて、珍しいっすね、それより天羽先輩は?」


「早く来過ぎて店内見てたら途中で見失った」


3人は深いため息をついてからどうしようか話をしていると。


ピンポンパポーン


「迷子?のお知らせをお知らせって・・ちょっとお客さん・・」


店内スピーカーからそう聞こえると


「ちょっとマイク貸して下さい、天羽です、誰でもいいから迎えに・・」


「お客さん、困ります勝手に放送したら」


と聞こえ3人は再度ため息をついて急いで案内所へ向かった。


無事に合流し片霧と操は遥に天羽を見張らせデパートをエンジョイしていた。


・・・


「今日は遥の腕でゲットした商品券で昼食だ、出た分は私が払う」


片霧は商品券を皆に見せながら言った。


「出た分は片霧が奢り?珍しい」と操


「片霧、1等10億の宝くじでも当たったか?」と既にデパートの昼食レベルではない答えの天羽


4人はデパート地下にあるファミリーレストラン入った。


そして片霧はデパートに来る前の事を話した。


「折原さんはそんな事ができるんだ」と関心しながら天羽


「遥って凄いんですよ、こないだだって60m先の・・・」


片霧は遥を褒め殺した


「そんな事ができるのか大和?」と天羽


「私は見ましたから」と大和


「いやいや、まぐれですから」と照れながら遥


「今度、見てみたい・・」と天羽が言ったところで遥を除く3人の携帯に同時にメールが届いた。


3人はメールを確認すると片霧が遥に小さな声で


「遥、ごめん、招集がかかったから、支払いお願い」


そう言ってお金を置いた。


3人は立ち上がると遥に「今日は楽しかった、また今度ね」と言いレストランを出て行ってしまった。


残された遥は置いていかれた感覚がして寂しくなり寮に帰る事にした。


戻る途中3人が今何処で何をしているのか、昨日みたいにまた怪我をしていないか気になりだし、押さえ切れなくなり保健室前に向かうと美佐が出てきて鉢合わせとなった。


「どうした折原?」


「先生、さっき先輩3人が・・」


「知っている」


遥は素っ気無く返されたが意を決して話をした。


「私・・先輩達に良くしてもらってるし・・私に何か出来る事があれば・・」


「見たら引き返せないぞ、死ぬかもしれない・・それでも行くか?」


そして「はい」と答えた。


遥は「死ぬ」より「興味」の方が今は強かった。


「見て嫌ならそう言え、記憶は消してやるから聖服を着て来い」


ここで遥は理解した制服ではなく聖服が必要なんだと。



聖服に着替えた遥は美佐に連れられ学校の地下室にいた。


地下室には何かの機械が並んでいた。


「ここが東門に通じる転送装置だ・・もう一度聞くが戻るなら今のうちだぞ」


「いえ、戻りません」


と遥が答えると美佐は装置のボタンを押した。


目の前が一瞬暗くなったらと思ったら地下洞窟にある10mはあろう黒い門の前にいた。


「ここが東門でわれわれがGBの侵入を阻止している場所だ」


美佐はそう言うと人間用に作られた扉の前に行きIDカードを出して門にかざしながら。


「聖門の大和美佐だ」


すると男性の声が聞こえた


「大和美佐さん認証しました、もう一人居るようですが?」


「新しいGG要員だ、まだIDが発行されてないが私が責任を負う」


「今、確認するのでお待ちを」


少しすると男性が戻り


「拠点リーダーの許可がでましたので開けます」


すると人間用のドアが開き美佐はドアの中に入って行ってしまった。


慌てて遥は美佐の後をついてドアを潜った。


先ほどの転送と同じような感覚になり今度は人が何人かいる大きな部屋にいた。


「折原、ここが門の中の拠点だ、ここでGBが地球の進入しないように我々が守っている、覚えておくように」


遥は「はい」とだけ答えた。


美佐がそれを聞くと、男性のオペレータに


「現状どうなっている?」


「今、鯨森が対応中で聖門の3人が応援に向かってます」


「我々も向かう、位置を教えてくれ」


美佐はそう言うと転送装置に上がる様に遥に言った。


「旧オルト市外で転送装置の直ぐ近くです」


「了解した」と美佐は言い同じ装置に上がってきた。


美佐が上がると今度は荒廃した街に転送された。



「ここが地球外の滅ぼされた星のオルトと呼ばれた街だ、よく見ておけ・・何もしなければ地球もこなる」


遥は現実の荒廃した街が衝撃だった。


遥が街を見ていると美佐がイヤホンマイク着ける様に渡してくれた、そして美佐が自分のイヤホンマイクをつけ誰かと話し始めた。


「聖門の大和美佐だ、鯨森生きているか?」


「こちら蓮見香織はすみかおり、大丈夫です」


「うちの3人は着いているか?」


「はい、応援感謝します」


「我々も今からそちらに向かう以上だ」


美佐がそう言うとイヤホンから声が裏返った蓮見の声がした。


「え?負傷者はいませんから大丈夫ですので大和さんは・・」


返事を無視した美佐は遥の手を取り聖法を唱えた、すると2人の身体が浮き上がりだし遥が驚いていると美佐が


「初歩的な聖法だ、そのうち教える」


そう言うと宙をそのまま動き出し、倒れかけのビルの屋上に降りた。


「折原、あそこが見えるか?」


言われた遥は言われた方を見ると、そこには黒いいくつかの霧の様な物と戦っている数人がいてその中に天羽、片霧、大和の姿があった。


3人聖服の一部が光っていて光る何かを持っていた。


天羽は長い槍の先に刃がついたハルバード、片霧と大和は大きさの違った弓を持っていた。


「あれが彼女達の聖服の武器だ、見ておくといい」


天羽はハルバードを巧みに使い次々と消し去り、それを援護する大和、そして凄かったのが片霧だった。


片霧は弓の上下が刃物の様になっていて距離に合わせて切ったり射ったりしていた。


「折原、個人情報保護で内容は言えないがあの3人はみんな個人的な何かを背負いながらこれに参加している、それが無いお前に出来るか?普通の生活とこれを両立させるのは至難の業だぞ」


そう言われた遥は真面目に


「もし、GBを止めないと地球が大変な事になるんですよね・・、私の好きな野球が見れなくなるんですよね・・それは嫌です・・去年私の好きなチームがリーグ優勝して今年2連覇がかかってるんです・・私は野球馬鹿だから何か背負うとか分かりませんが・・来年は家族と一緒にそれを見たいので・・」


「そうか・・理由は人それぞれだ、折原の理由がどうであれ参加してくれるなら、あいつらも助かるだろうし」



「切がないっすね今日は・・天羽先輩、大和さん周りの奴やるんで、一番でかいのお願いできます?」


片霧がそう言うと最後尾まで宙返りをした。


言われた2人は「了解」とだけいい天羽は一番大きい目標を確認し、大和は片霧を守る様にGBが近づかない様にしていた。


片霧は息を整え聖法を唱え始め弦を弾いた、すると弓が光を増し始め、それを見ていた美佐が遥に


「出るぞ片霧の必殺技が」


「行けー」片霧がそう言い弦を離すと弓自体から剣撃の様な物が飛び出し途中から分裂を繰り返し大量のGBを一掃し、そのタイミングに合わせ天羽は一番大きいGBに向かって突進してなぎ払いGBは消滅してしまった。


遥には3人がかっこよく見え、特に普段の片霧を知る遥は片霧が一番かっこよく見えた。


「鯨森の方も片付いたな、折原帰るぞ」


美佐がそう言うと転送装置に戻り始め、途中で遥は美佐に


「大和先生、私には何ができるんですか?」


「折原の聖服から何が生み出されるか分からないが、出す事になったらそれを見定めてからにしよう」


遥は「はい」と答えながら私はどんな物が出るかワクワクしていると。


「ところで、やれるのか?まだ引き返せるぞ」


「何が出来るか分かりませんが連覇がかかっているので」


と遥は真面目に答えた。


「そうか・・」美佐はそうとだけ答えた。

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