第20話 リアス大森林に伝説の剣が刺さってたってよ!

里に帰還を果たした、その翌日。


帰った後は、急に疲れが出てぐっすり寝たのか、少し遅い目覚めとなった。


俺は普段の日課である体操をこなし、気分も晴れやかだったので軽いジョギングに出た。


時刻は凡そ6時30。

本来この時間は、まだそんなに人は起きていない。


だが、今日は里の人達の殆どが起きて何やら話していた。


不思議に思いそちらの方へと向かうと。


「おい、キルル、セータ」

「あっ、ルクシオお兄ちゃん!」

「ルク兄!」


この二人は里のエルフの子供であるキルルとセータ。

元気溌剌で成長期真っ只中の5歳の子供だ。


「お前達、なんで今日はこんな朝早いんだ?」

「そうそう、聞いてくれよルク兄!俺森の中で昨日すげぇの見つけたんだ!」

「お前、昨日森に行ったのか!?危ないだろ!」

「大丈夫だよ!俺もう……上級魔法使えるし!」


なんで使えるんだよッ!?

まだお前祝福の儀も終わってない筈。


エルフの伝説は5歳にして既に始まっていると言うのか!?


「まぁ、いいや。それで何見つけたんだ?」

「そうそれ!俺昨日な……森の中で、地面に突き刺さった剣・・・・・・・・・・を見つけたんだよ!」

「なッ、なんだとッ!?」

「その剣さ、普通じゃねえんだよ!なんかこう、すげぇの光って……」

「セータ」


俺は無邪気に綻ぶセータの両肩に手を乗せて、切実に……。


「その話詳しく」


***


「てめぇら!準備はいいかオラァッ!」

「「「「おおおお!!!」」」」


「リアス大森林に突き刺さった一振りの剣!これが、普通の剣である事など!」

「「「「ありえないッ!」」」」


「その通り!もし、悪事を企てる悪人の手にでも渡れば、世界はたちまち崩壊するだろう!そんな事があって言い訳が!」

「「「「ないッーー!」」」」


「ならばやるしかあるまい!」

「「「「その通り!」」」」


「いくぞ野郎共っ!ロマンスの世界へっ!!!」

「「「「オラァァァァァァッーー!!」」」」


何故このような事態になっているのか。


以前、ルクシオが(概要:ルクシオ・クルーゼは、世間では言うところの、○二病予備軍である)事はお話しした通り、現在も進行中だ。

そんな彼は、「自分のこの夢を真っ向から語り合える存在」を欲していた。


つまり、彼はあろう事か、この里の住人(全員男)に自身の夢とロマンスをひたすらに語り続けた。


結果、皆それに毒された。

(皆○二病予備軍。だがルクシオよりはまだ進行していない)


そんな彼等が、伝説の森に突き刺さる剣に興味を惹かれない訳が、ない。


つまり彼等は同士。

そのリーダーであるルクシオの意思は皆の意思と化している。


結託したのだ。


森の中に突き刺さる剣を探し出し、入手する為に。


ルクシオの音頭を皮切りに、里の男達が一斉に森へと駆け出していった。


(やったぜ。皆完全に俺の演説の虜だ。このチャンス逃さない。俺はそもそも、お前らと結託した覚えはねえ。……伝説の森の刺さる剣。そんな凄い剣、お前らに渡す訳ねぇだろが!俺が誰よりも早くゲットして、捜索終了の時間になったら「諦めよう」とでも言えば皆諦める。何せ俺、不本意とは言え里の長っすからね)クズです。


プランは完璧に整った。いざ、参る!


ルクシオは電光石火の如く森へと突撃していった。


その様子を眺める里の残された住人達(ほぼ女)は、「もしかしたら、長を間違えたかもしれない」と感じていた。

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