第3話 チャット機能は、お嫌いですか?


「な、何してるんですか!?馬鹿なんですか!?死ぬんですか!?」


目を開けると、凄い形相でフィリアが俺の胸ぐらを掴んでいた。


「死ぬってか、死んだんだけどな」


「ふざけないでください!なんでこんな事を…」


「ちょっとフィリアに聞きたいことがあってな」


「た、確かに、死んだらまた会えるって言いましたけど、そんな理由で死ぬなんて…」


フィリアは俺から離れ、恐怖に満ちた顔をしていた。


「さて、それで聞きたいことがいくつかあるんだが」


「は、はい。何ですか?」


「質問1、あっちの世界ではフィリアと連絡取れないのか?」


「基本的には無理ですが……、今みたいに用があるたびに死なれたら困りますからね。特別に、これを使わせてあげます」


そう言って、フィリアは指先から俺に光線を放ってきた。


「なんだこれ」


光線に貫かれたが、別に身体に異常はない。


「人差し指と中指をくっつけて出して、下に折り曲げてみて下さい」


言われた通りにしてみると、目の前に窓のような物体が現れた。


「これは…?」


「特に名称はないけれど、さしずめ、《天界の戯れ》ってところですね」


「《天界の戯れ》…」


「天使達が使ってる通信術です。もっとも、貴方に渡したのは限定版ですが」


「これで連絡が取れるのか」


「はい。使い方は見ればわかりますよね」


「ここに文字打ち込んで、下のボタン押せばいいんだろ?」


「そうです」


「おっけ。んじゃあ質問2、あっちの世界の文字読めないのどうにかできないか?」


「んー…そこまでのケアはできませんね。一応、特典は公平でなくてなりませんから」


「ま、そうだよな」


本来なら、この《天界の戯れ》も相当無理してくれているんだろう。フィリアにはこれからも世話になるし、ちょっとずつ引き出せればいい。


「ですが、あっちの世界にも辞書があります。それで勉強してみては?」


俺の頭は至って平均的なので、全く知らない言語を辞書だけで解読するなんてどこぞのゲーマーコンビみたいな所業ができるとは思えないが、フィリアなりの最大限の助け船だ。


「まあ、やってみるよ」


「はい。さて、私からこれ以上摩訶不思議な力は与えられませんし、そろそろ戻りましょう」


ちょっとずつ引き出せばいいとか思った矢先にこれである。


「え、もう少し話そうぜ」


「正直、この状況ってちょっと不味いんですよね。上の人にバレるとお咎めを受けてしまって、最悪、特典剥奪なんてことも…」


「ま、まじか。じゃあ戻るわ」


「…今度からは、変な理由で自殺しないでくださいね」


「前向きに善処する方向で検討させていただきます」


「はあ。ちゃんとしてくださいね」


フィリアがため息をついたので、何か面白い返しでもしようかと考えていると、急に俺の身体が謎の光に包まれた。


「もう時間か」


「そのようですね。何度も言いますけど、命は大切にしてくださいよ」


「安心していいぞ。当分は痛いのはごめんだしな」


《天界の戯れ》の機能があれば、大抵の事は死ななくても何とかできるだろう。


「その言葉、信じますからね。それでは、行ってらっしゃい」


「ああ。行ってきます」


身体を包んでいた光が一際強くなって、俺はフィリアの前から消滅した。


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