紅智クロック(ふとした不幸の恋戻り《クロックバック》)

深紅ルベ

第0刻:100%巻き戻り!?

 もしも、告白を受け入れた自分が次の瞬間に突然、数十分前に通りすぎた場所に立っていたらどんな反応をするだろう。

 俺だったら急いで告白された場所に戻る。


 そしたらそしたで告白してきた相手との認識の齟齬そごが発生してしまった。

 その状況では俺が相手の気持ちを錯覚したかのような自意識過剰発言にしか聞こえず、恥をかいた。


 けれど、確かに告白されたんだ。

 なら、どうしてだ?


 告白してきた相手には嘘をついてる様子はない。試しにこちらから告白してみる。

 そうすると相手の方から受け入れる形とはなるが、改めて交際が成立。

 俺はさっきまでのことは忘れようと、即座に気持ちを切り替えた。


 そしたらどうだろうか。

 また同じことが起きたのだ。

 それを数回、バカのように繰り返しているうちに気づけたはずなのに。

 十数回繰り返してようやく結論に至る。


 ――俺は時間を遡行そこうしているのだと。

 分かりやすく言えば巻き戻り。けれど巻き戻りのたびに俺以外、記憶は持ち越されてはいない。認識の齟齬があったのはこれが理由だろう。


 なら、何故巻き戻りが繰り返されているのか。これに関しては分からないが、代わりにバカみたいな十数回の経験則が巻き戻りをする条件を明確にしていた。

 条件は告白。そして交際関係が成立すること。


 冷静に、分かる限りで状況を分析しきったところで。

 俺はその場に崩れ落ちた。あまりに現実味のない現実にショックを受けた。


 1度も交際経験のない俺は、誰かと両思いになるのは不可能なのだと。

 勉学や部活動などに比べて恋愛には頓着しない方だが、この先俺の価値観がどう変わっていくのか分からない。

 何よりも一概の高校生なのだ。別に恋愛に興味がない訳じゃない。


 そう考えると、辛くなった。

 太刀打ち不可能で、一方的に蹂躙されるがままとしかなれない心。次第に気力はなくなり、遠い目をして夕日を見るしかできなかった。


 途方に暮れながら、俺は一つの思いにうちひしがれていた。


 ――どうしてこうなった。


 これは、俺、紅智京あかさとケイが織り成す切なくて報われない、そんな学園ラブコメディである。

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