あの人には勝てない

小さい頃から彼女は僕の前を行く。


勉強、運動、友達。そして恋心。


いつだって彼女は僕の前を歩いている。


「結婚するの。あの人と。」


そう言って、少し悲しいような顔をして笑う彼女の気持ちなんて

分からない。




いつだって君は私の後ろだね。


私がてくてく歩いていくと


君はいつもついてきた。


それがなんだか嬉しくて


気づけばいつでも前を歩いてた。


どんど苦しくなってきて


距離がどんどん遠くなる


あなたが見えなくなる頃に


「そっか。おめでとう。」


と君は言う。


無邪気で楽しいあのころを


君は思い出してくれるだろうか。



「ありがと。」






静かに、しずかに

日は暮れる。

彼女はもう帰ってこない。


君はもう、追ってこない。

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