16日目『一夜だけのオデット』

「ここで踊らせて。少しだけでいいわ」

 彼女は静かにそう頼んできた。ほんの少し、震えた声で。

 控えめに流れる音楽に合わせ、何度も練習していた踊りを、彼女は踊る。

 でも、舞台でそれを踊れるのは、別の子だった。


 月光に照らされたこの姿は、どの白鳥よりも美しい彼女は、私だけのものになる。

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