生徒会の狙い
「一体何故……?」
俺は、高山先輩の言葉の真意が知りたくて、率直な感想を述べた。いや、零れてしまったというべきか。それ程、「全力で守る」と言った高山先輩の言葉を呑み込む事が出来なかったのだ。
俺が単純に
学校長もそういう
それでも尚、俺を守るという生徒会の狙いがわからない。
「不可解……という顔ですね」
「そりゃあ勿論」
「学校全体から疎まれる……その覚悟なくしてあの力を使ったのですか?」
そんな高山先輩からの確認のような質問に、俺は一度口を結んでから答えた。
「いえ、それはありません。今ある力、全てを出して俺は戦いました。あの戦闘に、あの勝利に後悔なんてするはずもありません」
俺の回答に、高山先輩が一瞬だけ微笑んだように見えた。
いつもの振りまくような笑顔ではなく、口元こそ微動だにしなかったが、うっすらと目元が……笑ったような。そんな気がしたのだ。
「結構です」
そう言葉にした時には、いつもの高山先輩に戻っていた。
もしかしたら、あれが高山先輩の本当の笑顔……その一部なのかもしれない。
「あの選考会には軍の方もお見えになる。私はそう言いましたね?」
そういえば、生徒会室に呼ばれて選考会の説明を受けた時、高山先輩は確かにそう言っていた。
俺は縦に首を振り、記憶に残っている意を示す。
「軍の方は、火水君の戦い方を
「はぁ」
「国立養成学校杯――通称
「統一杯で、俺の戦い方を全養成学校の人間が目撃する事になります」
「その通りです。それを、当校の校長は快く思わない」
「士族意識の高そうな方ですからね」
そんな俺の言葉の後、高山先輩は少しだけ目を伏せて溜め息を吐いた。
それは俺に対してではなく、これから発言するナニカに対する予防線のような溜め息に見えた。
「これは全原会長のお言葉をそのままお伝えしますが……」
これだ。きっと高山先輩でさえ
そう思い、俺も喉を鳴らして覚悟をした。
「『そんなもの糞食らえ』……だ、そうです」
時に人は、覚悟してても目を丸くするのだと学んだ。
あの高山先輩がその言葉を口にした事にも驚いたが、全原会長がそう言い切った事にも驚いた。
「……コホン」
わざとらしい高山先輩の咳払いに、俺は慌てて反応する。
「あっ、えっと……その、驚きました。全原会長は士族意識が高い方だと思っていたので……」
「あの方は、常に全力を出して戦います。あの方程、執念深く、向上心の高い人間を、私は知りません」
「だからこそ統一杯の男女総合二位」
瞬間、高山先輩の目が鋭くなる。
「あの方の才を持ってしても二位ですっ」
立ち上がった高山先輩はとても真剣で、とても純粋な憤りを見せた。
一体何故だ? 男女総合十位以内になれば――
「……火水君は、長い統一杯の歴史の中で、召喚士が聖十士入りした回数を知っていますか?」
……なるほど、そういう事か。
「限りなく少ないですね」
「昨年の私の第五席、全原会長の第二席を除けば十に満たない数です」
「……確か統一杯は、今年で――」
「――記念すべき第三十回目です」
年に一度ある統一杯で、三年に一回しか十位以内に入れていないという証拠。
そして、召喚士が第一席である男女総合一位をとった事は……一度も無い。
「全原会長をして二位。統一杯の上位をほとんど剣士たちがさらっていきます。魔法士が一昨年一位を取りましたが、それは魔法士学校の快挙とも呼べる出来事でした。何故ならそれ以外の全ての一位は、剣士学校がもっていったからです」
――――剣士の一強時代。
一般人が通う普通の高等学校の世代に該当する俺たちでは、
当然、上等召喚士や特等召喚士となるまでに修練を積めば、前線で戦う剣士たちと渡り合う事も可能だ。しかし、経験という年月を経なければ培えないモノを得るには、十代というのは余りにも若い。
だからこそ、
「全原会長がいるこの世代、火水君がいるこの世代でしか、それは成し得られない。我々生徒会はそう考えているのです」
「え、えっとつまり……全原会長の最盛期である今年の統一杯――」
「――えぇ、私たちは男女総合一位を狙っているのです。そのためには火水君、あなたの協力が必要なのです」
……ようやくわかった。
今年の統一杯だけに関して言えば、ウチの生徒会はたとえ泥水を
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