第5話 椅子よ、椅子よ

私は椅子に座りはしない

座りなさいと言われたら背を向ける

しかし、椅子よ、お前の気持ちは

どうなのだろうね、座られたいのか

それとも共に座っていたいのか


私は椅子の前で踊ってみた

やがて疲れると椅子の前に

座り込み、木の座面を、肘掛けを

四つの華奢な足を撫でてみた


おまえには手はないのか

創造主は手をつけ忘れたのか

手をなくして誰を抱きしめる


あゝ、しかし私の手こそ誰を抱きしめるのか


椅子しかない部屋のなか

おまえと私は対峙していて

私は椅子に座ってはいない

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る