骨太な異世界の描き方

「1-6 新緑を紅(あか)に染めて」まで拝読。タイタニア(巨人)の住む国において”矮躯”と蔑まれ、死んたことにされた青年が、国の外に出て世界を見るお話。
異世界を舞台にした社会派小説だと感じた。
小さな身体の子を奇形児のように忌み虐げる思想は、フィクションのなかの絵空事と言えるだろうか。少し容姿が異なるだけで異分子と見做す傲慢は、私たちの社会の中にも隠れてはいないだろうか。
巨人が闊歩する国をひとたび離れれば、小さい体をコンプレックスとした主人公がむしろ平均よりも大きいと感じられる世界だった。小さなカテゴリの中での標準が、外のより大きな社会での標準とかけ離れていないだろうか。視野狭窄していないか。
洋の東西で神話の解釈が微妙に異なったり、生きるためには時に敵を殺す覚悟が必要であったり。
我が事として身につまされる描写が多く、魔法やファンタジー世界の諸種族、キャラクターに至るまでよく設定が練られた骨太の、「読ませる」小説だと思います。

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