6-4

 ユーウェインとの通話が終わってから、クー・フー・リンは改めてアンテナショップへと入る。


 気が変わった訳ではないと思うが、彼女が速足気味で向かっていた場所は、リズムゲームプラスパルクールのコーナーだった。


 おそらくは、ARガジェットを購入する為に戻ったという可能性が高いだろう。


(様々なジャンルのガジェットがある)


 クー・フー・リンはリズムゲームプラスパルクールのコーナーへ向かう途中に、様々な形状のARガジェットを発見する。


 武器の形状や変身ベルト、様々な形状――それこそ千差万別とも言えるような状況だ。


 ARゲーム用のスーツも販売されており、そのデザインはライダースーツを連想させる。こちらに関してはオプションなので、必須ではない。


 あくまでもARゲームをプレイするだけであれば、ARプレートとそのゲームに対応したガジェットがあれば充分だろう。


(プレートは他のゲームでプレイしている物で問題はない。ガジェットは、ジャンルによってはチートと間違われるだろうな)


 ARガジェットに関しては、ジャンルによって使える物が限られる。対戦格闘で使えるような素手格闘用のガジェットがFPSでは使用できない――と言う風に。


 他ジャンルでもガジェット使用を許可すれば、それこそあるジャンルのガジェットを使えば勝てるという事でプレイの幅が狭まる事は考えられるだろう。


「いらっしゃいませ」


 男性スタッフと思わしき人物に遭遇、クー・フー・リンは事情を説明して使用出来るガジェットを探す事にした。コーナーの一角へ向かえば早いのかもしれないが。


「そのゲームのガジェットでしたら、コーナーの方へ行かなくても在庫の方が切れていまして……」


 まさかの反応に、クー・フー・リンは言葉を失う。何と、在庫切れなのである。


「マイナーゲームと言う事で入荷数を絞っていたのですが、そこにあるニュースが飛び込んできて唐突に売れ出したのです」


 リズムゲームプラスパルクールがマイナージャンルなのは認めざるを得ない。しかし、唐突に売れ出した理由はクー・フー・リンには分からなかった。SNS炎上の影響を受ければ、売れるよりも売り上げが落ちる方が正しいだろう。


 逆に売れる事自体、明らかに矛盾している。もしかすると、炎上商法で売れているのだろうか? 仮にそうだとして、原因は何にあるのか?


「とりあえず、四月には入荷するという話なのですが」


 入荷するのは四月らしい。今は、三月末か? 時期が分かれば、何とかなりそうだろう。クーフーリンは店を出る事にした。売り切れた理由はスタッフも店員も、周囲の客でさえ話す事はなかったようである。


 周囲からは『察しろ』というオーラでも出ていたかのようだった。


 

 その頃、ユーウェインのいるコンビニにある人物がやってきていた。


「ユーウェイン、これはどういう事?」


 私服に金髪の女性、パーシヴァルが姿を見せる。彼女も真田さなだシオンがレッドダイバーとは思っていないようだ。


 それを問いただそうとガラハッドと連絡しようとしても連絡が取れない。肝心な時に不在を決め込んでいるのか?


「ソレは明らかにアフィリエイト狙いの偽サイト――本物ではないだろう」


「偽サイト? どういう事なの? それこそ尚更――」


「こっちも言いたいことは山ほどある。偽サイトであるかどうかを見極めなければ、その辺のパリピとレベルが変わらない」


「超大手のまとめサイトとか匿名掲示板の物はないけど、この情報が載っているのは――」


 パーシヴァルも載っているサイトがサイトだったので信用したらしい。しかし、どう考えても体格などで矛盾が生じるのでコラ画像と言う路線が高いだろうか?


(まとめサイト自体、規制が入りつつあるけど――これでは過去の事例も蒸し返す可能性が高いわね)


 ユーウェインは少しだけ残っていた強炭酸水のペットボトルを飲み干し、空のペットボトルを手持ちのバッグの中へとしまった。


 コンビニ内のゴミ箱へ捨てるという選択肢はない。あくまでも、ペットボトルを洗ってからだした方が良いという判断かもしれない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る