1-4
ギャラリーが視線を向けているのは、走っているプレイヤーだけではない。スタート地点近くのゲーセンやARゲームのアンテナショップではセンターモニターを設置しており、そこで観戦する事も可能だ。
実際、スタート地点とゴール地点は同じ場合もあれば、コースによっては違う場合もある。今回は同じようだが、レース実況を含めてセンターモニターで観戦するケースが多い。
「これは、まさか――」
しかし、一分が経過しないようなタイミングで発生したアクシデントには言葉を失っている。
「これが現実――そう思わない?」
先ほどのフードの人物とは打って変わり、センターモニターの方に姿を見せたのはサバイバルゲームで着る様な迷彩服に黒髪ポニーテールと言う女性だ。
明らかにこの場所にはふさわしくないと思われがちだが、一般人が指摘する様な様子はない。それ程に、草加市内では当たり前の光景になっていたのである。
(プロゲーマーの真田シオンが、どうしてここに?)
ヒビキは顔を見て、この人物が誰なのか即座に分かる位に――彼女は草加市内で有名人だった。
「どのゲームでも一瞬の快感を味わう為に、チートプレイヤーが無差別に荒らしまわる事実を」
シオンの一言に対して、周囲が反論する様な事はない。彼女がプロゲーマーだから――と遠慮している訳ではないだろう。
しかし、信者によるSNS炎上を恐れて発言したくない訳でもないのだ。誰も否定しないという事は、チートプレイヤーが暴れまわっている事を認めている。
「最近のチートプレイヤーの増える現象は、明らかにおかしい。まるで――」
それでもシオンはチートプレイヤーが増えるスピードの違いを驚いているようでもあった。
総プレイヤー人口に対して、わずか数%に満たないような人数がチートプレイヤーと言われているが、今回の増加スピードはそれすら凌駕している。
下手をすれば、チートプレイヤーが全体の一割に及ぶ作品だってあるかもしれない。それが現在のチートプレイヤーの増え方だ。
「君もいずれは自覚する。これは何者かによって仕組まれたマッチポンプだと」
言いたい事だけを言い残し、シオンは別の場所へと立ち去っていく。あの方角だとコンビニ方面か?
しかし、ヒビキはシオンを追いかける事はせずにセンターモニターでゲームの様子を見ていた。
ゲームの結果としては、一位のプレイヤーがチートと言う事で失格となる。挙動を見ていて明らかに普通とは思えないので、分かりやすいチートなのかもしれない。
逆に分かりづらいチートだと、不正検知機能でも発見するのには限界があるようで、モグラ叩き状態が続いている。
(これも第三話で言われていた。チートプレイヤー問題、これが後に――)
レッドダイバー第三話、そこではARゲームではないがゲームのチートプレイ問題を取り上げていた。
このチートプレイ問題に関して言えば、後に様々なWEB小説等でも類似案件を取り扱ったり、逆にチート主人公の様なジャンルも生まれている。
さすがに異世界を舞台にしたチート主人公までは予言出来なかったが、チートプレイヤーの増加に関してはゲームメーカーの努力によって数割は減らしていた。
あくまでも数割と言うレベルであり、完全に根絶出来ていない。それこそもぐら叩きの状態なのは言うまでもないだろうが。
(地球は狙われている――SNS炎上でひと儲けをしようとする宇宙まとめサイトによって)
ヒビキはレッドダイバーの言葉を思い出していた。この状況を利用してひと儲けをしようとしている芸能事務所がいるのであれば、彼らの行動を止めなくてはいけない。
(SNS炎上は、やがて最大の悲劇を生み出すだろう。だからこそ、炎上を止める為に立ちあがってほしい)
ヒビキはレッドダイバーが主人公に語りかけていたメッセージを思い出す。まるで、目の前のセンターモニターにレッドダイバーが姿を見せているかのように、そう感じていた。
誰もが過去にあこがれたヒーロー、レッドダイバーとして彼は立ちあがった。SNS炎上を利用してライバルコンテンツを潰し、自分達のコンテンツを唯一の神として歴史に残そうとしている勢力に対し――警鐘を鳴らす為。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます