第3章 それぞれの道へ

3-1 まどかとの帰り道

 その日の夜、真智子は久しぶりにまどかの携帯に連絡を入れた。

―まどか、久しぶり。期末試験中、一緒に帰らない?

しばらくすると、まどかから連絡が入った。

―いいよ。じゃあ、帰り支度が済んで先に教室から出れた方が迎えに行くということで。もし、私が廊下で待っていなかったら、迎えに来て―。

―了解―。


次の日、試験が終わった後、帰り支度を済ませた真智子はまだ、まどかが来ていないのを確認し、まどかのクラスの教室の方へ歩いていると、丁度、教室から出てきた慎一と修司に鉢合わせし、目が合った―。慎一が真智子に笑いかけた瞬間、修司の声が響いた。

「よ、真智子、今、帰り?」

「うん。まどかと一緒に帰る約束していて……」

「じゃあ、皆で一緒に帰る?」

「今日は遠慮する。久しぶりにまどかと一緒だから……」

「えー、何々?女ふたりで内緒の話?俺たちは邪魔者ってわけ?」

「まあまあ、修司、そう力まなくても。真智子もこのところ、ピアノのことでも気合い入りすぎてたから疲れてると思うんだ」

「そんなに大変だったの?お前……」

「そうね。慎一、レベルが高いから、気合い入りすぎちゃったかな。でもお蔭で、自由曲も決まったところだよ」

「そうか。よかった」

「うん……」

その時、帰り支度を済ませたまどかが教室が出て来た。

「真智子、お待たせ……って感じでもないか」

「まどか、ちょうどよかった。真智子に皆で帰ろうって言ったら、まどかとふたりで帰りたいって真智子が言うから……」

「だって、私たち、このところ話す時間、なかったから……。でも、せっかくだから今日は四人で帰ろうか」

まどかがそう言うと、透かさず、慎一が言った。

「僕、図書館に用事あるからさ、修司も来る?」

「えぇーっ、お前に付き合うの?」

「そうそう、数学のわからないところ、教えてあげるからさ」

「ま、しかたないか。じゃあ、そうするわ」

先に歩き出した慎一の後に修司が続いた。

「じゃあ、また」

慎一が真智子に向かってそう言った後、修司が慎一の後を追いかけながら叫んだ、

「じゃ、そういうことで。ふたりとも勉強も頑張れよ!」


そして、真智子とまどかはふたりきりになった―。

「なんかこういうシチュエーション、まどか、予測してたでしょ」

「まあ……ね。真部君と修司が仲良くなったというのが少し不思議な気もしてたけど。どこか気が合うところがあるみたいだね」

「そういえば、慎一、修司のこと、かっこいいって言ってた」

「確かに修司はスポーツ万能だから、男から見てもかっこいいかも。それよりさ、真智子は真部君とはどうなってるの?」

「そう……ね。なんだか今は心が苦しい感じかな」

「心が苦しいって……、真智子、受験前なのに大丈夫?」

「受験はたぶん、慎一のお蔭でピアノの腕前、上達したから乗り越えれると思うけど。慎一は芸大、合格でも不合格でも留学しなさいってお父さまから言われてるんだって……」

「そっか……。真部君、奈良の御曹司って感じだものね」

「ああ、確かに。そうね」

「あまり、思い詰めない方がいいと思うよ」

「そうだね。その方がいいよね。とにかく、たとえ遠くに離れても応援しようって思えるようになったところなの」

「……大変だったね。真智子」

「今も大変だけど、あまり、悩み込まないようにしてるんだ……。でもまどかに聞いてもらって少しすっきりした。それに実際、大変なのは慎一だからね」

「それに、私たちも!先ずは受験でしょ!」

「そうだよね。頑張らないと!まどかも大変なところ、聞いてくれてありがとう……」

そうこう話すうち、練馬駅に着いたので、ふたりはそこで別れ、それぞれの改札へと向かった。

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