第2話 4月28日

 16時半ごろ、はなひらを訪れると二人のお客さんがいた。窓際には髪を赤く染めた女子大生。カウンター席には新聞を読みながらコーヒーを飲むスーツ姿のおじさんがいた。どうか女子大生のほうであって欲しいけれど、赤い髪は正直怖い。できれば背後の扉からもう一人新たな女子大生が登場してほしい。しかしそんな願いも空しく、赤髪の女子大生がこちらに向かって軽く手を振ってきた。もしかしたら平成の間だけと称して怪しい薬でも売りつけられるかもしれない。大丈夫、私の持ち金は1000円しかない、1000円じゃいいとこ風邪薬くらいしか買えないだろう。いま私お金がなくて…と頭の中で詠唱しながら、赤髪の女子大生が座る席へ向かった。

 「はじめまして、どうぞ座って」

 彼女は派手な髪に反してとても優しい話し方をした。白い肌に、丸くかわいらしい目と桜色の小さな唇がのっているのに、ジーンズに白いTシャツという出で立ちで、髪の色も相まってなんだかとてもアンバランスだった。しかもこの人が平成フレンドを募集している?ギャップが甚だしすぎて胸やけを起こしそうだ。私が豪奢な椅子に腰をおろすと彼女は口を開いた。

 「須藤凛です。今日は来てくれてありがとう」

 須藤さんはつむじが見えるほど深々と頭を下げた。綺麗に染まった真っ赤な頭だ。

 「田口ミノリです。よろしくお願いします」

 「ミノリちゃんね。よろしく。ところで、こんなことを聞くのもなんだけど……」

 須藤さんは私が頭をあげたタイミングを見て聞いた。

 「今日は、どうして来ようと思ったの?」

 「えぇっ……なんとなくですかね、面白そうだなあって」

 「なるほどね。私も軽い気持ちで投稿したから本当に誰かから、しかも全然知らない子から反応が来るなんて思ってなかったから。びっくりしちゃった」

 「すいません……」

 須藤さんは笑った。店員さんが注文を取りに来た。私はカフェオレ、須藤さんはコーヒーのお代わりを頼んだ。

 「私がおじさんだったらどうするのよ」

 「その時はその時かなって……正直あんまり考えてませんでした」

 「ミノリちゃんって死ぬの早そうね」

 とんでもなく失礼だなこの人は。私は須藤さんを見つめたが、当の須藤さんは平気な顔をしている。

 「募集しておいてそれはないですよ……。逆に私は須藤さんがなんで平成フレンドなんて募集してたのか知りたいです」

 「凛でいいよ。うーん。そんなに面白い理由ではないんだけどさ」

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