第4話 パンパカパーン

 テトラの声と思念のギャップに驚きました。

 僕は断然思念より実音声派です。

 

「テトラ、声出してる方が断然いい!」

 

 だって少女が思念で野太い声を出しているのは、誰だって気持ち悪いと思うし。

 ただでさえ美少女な顔つきのテトラは、それに合う声で喋って欲しいです。

 

「そ、そうか?

 我は違和感しかないのだが。

 その方が可愛いか?」

 

 テトラもドラゴンだけど可愛いとか気にするんですね。

 さっきも可愛いって言った時喜んでましたし。

 いや、本当に可愛いんですけどね?

 

「うん、そっちの声が可愛い。」

 

 中身がテトラだから、少し緊張するけどこうやって会話が出来る。

 多分、こんな美少女と一対一で話をしたら緊張しすぎて会話が成り立たないと思います。

 

「そうか、ならば我もこの姿の時は思念での会話を極力やめよう。」

 

 喋り方はアレですけど、そこまで言う必要ないですね。

 声聞いてるだけで幸せな気分になります。

 

 半年もぼっちやってましたし。

 

 さて、それはそうと拾ったものを確認です。

 テトラは黄金蟲の卵って言ってましたね。

 黄金色に輝いていて綺麗ですけど、蟲の卵だと思うと背筋が震えそうです。

 でも高く売れるそうなので大事にとっておきますか。

 

 巣から離れると孵化しないみたいですし。

 

「でも、いい拾い物をしたね。

 今度売りに行こう。」

 

 魔物を倒してもらってその素材を売るつもりだったけど、こう言う事もあるんですね。

 ダンジョン経営、なんだかやっていけそうな気がします。

 

 そうそう、検討事項を確認しておかないと。

 

「テトラ、やっぱりキラードッグの配置は変えた方がいいかな?」

 

 まさか二階層で引き返されるとは思ってもみなかったので、少し反省しています。

 魔物の強さがよくわからないまま配置したのは間違いでしたね。

 

「いや、あれくらいでいいと思うぞ?

 その方が奥に何があるのかと言う探究心を煽れるのではないか?」

「なるほど。」

 

 そう言う解釈もできるんですね。

 やっぱり他人の意見って大事です。

 

「じゃあ、このままでいいかな?」

「うむ、少し様子を見て、それからでも良いのではないか?」

 

 そうですね、いきなりダンジョンを入れ替えても、もしあの3人が戻ってくるといらぬ警戒をされるかもしれません。

 改善するためには、きちんと情報を集めてから。

 不用意に動かさない方がいい場合もあります。


「じゃあ、しばらくこのまま様子を見ましょう。」

「うむ。」

 

 それからお昼を過ぎましたが、次の一行のご来場はありませんでした。

 

「テトラ、暇だね。」

『そうか?我は待つのも楽しいが。』

 

 管理室に戻って、ドラゴンの姿に戻ったテトラはモニターの前で丸まっています。

 僕はその横で腕立て伏せ。

 暇なので、今までやっていなったトレーニングを始めました。

  

「テトラは普段何をしていたの?」


 ドラゴンの日常って気になります。

 

『我は特に何もしておらんかったな。

 時折山で争い事がないか監視のために飛んでおったくらいだ。

 あとは大体眠っておったよ。』

 

 それって退屈そうですね。

 あ、最近退屈って言ってましたしね。

 

「そっか、なら、これくらい待つのも平気なんだね。」

 

 ふぅ・・・ちょっと休憩。

 普段やらない事をすると流石に疲れました。

 まだ、30分も経ってないですけど。

 継続は力なり。

 やらなければそれこそ意味ないですしね。

 コツコツやっていきましょう。

 

 そうだ、寝よう!

 別に変な思いつきじゃないですよ?

 ちゃんと意味があるんです。言わば仮眠です。

 もしダンジョンにお客さんがやってきたのが夜だったら、眠くてちゃんとモニタリングできないかもしれないですからね。

 

 それに、夜にお客さんが来なかった場合、獲得した素材等を売るためのルートを確保する予定です。

 

 少し気が早いかもしれませんが、街の近くに出入り口を作っておこうと思います。

 なるべく僕の地元は避けようと思いますので、何日かかけて進もうと思います。

  

 夜は怖いので、テトラについて行って貰おうかな。

 ドラゴンだけど、女の子と二人旅も憧れちゃいます。

 

「じゃあ、僕はお客さんが来た時に備えて仮眠しようと思うけど、テトラは起きてる?」

 

『あぁ、我はもう少しモニターを眺めていよう。』

「そっか、じゃあおやすみ。」

 

 来客の知らせはランプだけじゃなくて、小さなブザーが鳴るようにしておいたから起きれるだろう。

 

 それに備えて、僕は眠った。

 普段やらないトレーニングで疲れた所為か、すぐにでも眠れそうだ。

  

 

 〓〓〓

 

 

 

 

 《パンパカパーン》

 

 

 

 

 僕は設定していたブザーの音に飛び起きた。

 

「い、いらっしゃいませ!」

 

『誰に言っておるのだ。』

  

 寝ぼけてテトラに向かってお辞儀をしたようだ。

 だんだん頭が起きてくると、ちょっと恥ずかしい。

 

「ご、ごめん。寝ぼけてて間違えちゃった。

 ところで、お客さんきたの?」

 

『あぁ、今度はお客と言うような風貌ではないがな。

 せいぜい楽しませてくれるといいのだが。』

 

 テトラに言われてモニターを覗き見ると、そこには柄の悪そうな男たちが30人近く映っていた。

 屈強そうな身体をしているが、服や髪はボロボロで、いかにも山賊や盗賊と言った雰囲気だ。


 でも、人を見た目で判断するのは良くないです。

 テトラだって、可憐な少女と思いきやドラゴンなわけですから。

 お客さんには変わりありません。

 

「入ってもらえば、見た目は関係ないですよ。

 みんな同じお客さんです。

 ご来場、ありがとうございます。」

 

 僕は改めて、モニター越しにお辞儀をした。

 そんな僕を見て、テトラは思念を飛ばしてきた。

 

『テトは変わり者だと言われたことはないか?』

 

 唐突ですね。

 

「あんまり言われたことはないかな?

 そもそもそんなに人付き合いがなかったし。

 僕、変わってる?」

 

 自分でもそんなに自覚は無いんですけど。

 変わり者なんでしょうか?

 

『いや、我の言葉が悪かったな。お前は純粋なだけだ。気にしないでくれ。』

 

 何か気を遣わせちゃいましたかね?

 大丈夫ですよ、僕は全然気にしてません。

 テトラは本当に優しいですね。

 

『お頭、やっぱりダンジョンが現れたって話は本当でしたね。遠くから盗み聞いたんですが、冒険者は黄金蟲の卵を落として帰ったとか。』

 

 おや、彼方も何やら話をしています。

 最初にご来場頂いた冒険者が、ダンジョンを広めてくれてるんですかね?

 

『何?黄金蟲の卵か、それはいいな。我らが代わりに拾ってやろうでは無いか。

 それにしても、いい情報を拾ってくれたな。』

 

『へへっ、あっしの盗聴のスキルは中々に便利なんでさぁ。おそらくこのダンジョン、まだ攻略されて無さそうですから宝も残ってるはずでさぁ。』

  

『よし、野郎ども、キラードッグの群れがいるらしいから心して進めよ。

 宝は俺たちザウラス盗賊団が掻っ攫うぞ!!』

 

『『おぉおおおお!!!!』』

 

 何やら張り切っていただけたようで嬉しい限りです。

 でも、盗賊団ですか。

 見た目で判断する事も必要なんですね。

 

 人付き合いって大変そうです。

 

 外はまだ真っ暗なようです。

 ダンジョン攻略するのなら、流石に夜明けまではまだ時間があるでしょうし。

 今夜はこの方々のモニタリングを楽しみましょう。

 

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