コートの中の神様は、白線の外で私を待っていた。

コート。
線を跨いで外に出たらアウトで中に入ったらセーフ。

ただの線なのに意味を明確に区切る線。
その中で先輩は私の全てだった。

でも、先輩は私を置いてバレーを辞めた。
私を置いて、この世の線の外へ出て行ってしまった。

どうして。どうして――。

――――――――――

先輩と私(木島)の視点の対照。
先輩の才能と、木島の才能の対照。
白線の内と外の対照。

この小説の魅力は全て、この対照にあるのだと思う。

何度も、何度も読む。
すると、この対照が光ってくる。

コートの中の先輩を特等席に置いて、神様みたいに見上げる木島。
全てにおける才能を先輩より持っているくせに。木島は見上げるのだ。

その才能ゆえに誰もが特別扱いして、そばに寄らなかった先輩に。
その才能を凌ぐ木島が見上げるのだ。

コートの中での自らの行く末を、先輩は分かっていた。
コートの中の先輩が私の全てだと、木島は思った。

才能の為に独りになった先輩を、才能がある木島が孤独にする。

木島のウロのような瞳に映り込んだ先輩は、コートの中にしかない存在なのか。
先輩を独りにした才能さえも無くなったら、木島のウロからは先輩はいなくなるのか。

何度も、何度も読む。
すると、全部が分かる。

「みんな頭が悪い」
この言葉がどれだけ、理解を示していたか。
理解を、こい、ねがっていたか。

神様は、コートの外でずっと待っていた。
それが、どういうことかを。

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