第2話 ウオのスプルース

その夜。

自宅に帰った俺は壁ぎわに置かれた愛用の三本のギターを意識的にながめまわしていた。


ギターを弾く身ながらギター自体の材質なんて気にしたことがない。性能はどれも同じ、そう思うとこだわることなくほぼ見た目で買っていた。あと金な。

俺にとってギターは音を作り自分の想いを曲にのせて伝える大切な道具だった。

自分の腕といってもいいくらい大切な道具。


ふと、さっきの『呪いのギター』の話を生々しく思い出し自分の腕をさすってしまう。


(あの後、男はどうなったんだろうな? 呪いから逃れるために 腕を切り落としたんだろうか? 自ら命を絶ったのだろうか? それとも・・・他に何か・・・)


思わずギターたちに向かって両手を合わせて拝む。


「ごめんな。スプルースの木。生きてたのになあ、ごめんな・・・でも、俺んとこ来てくれてありがとうな・・・絶対いい曲作るからな。おまえから生まれたんだって誇れるようないい曲作るから、呪わんでくれよな」


そして、もう一言付け加える。


「間違ってもおまえは呪いのギターなんかじゃないよな・・・なんもないよな・・・」


俺はギターを手にとって軽く弾くとギターを抱きしめたまま床にゴロンと寝そべるやいなや酔いがまわってきて、あっという間に眠りにおちていった。

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