第1話 : 最上階の罠 ( 4 )




「バケモノめ…。」



 仲間を失った今、同時に勝機も失った。


 うぅぅぅ考えろ… 考えろおぉぉぉ…。


 絶望的な状況下、大粒の汗が首を伝う。


 俺に有って、ヤツに無いぃぃ… ものぉぉ… ?



「ぐぐぐぐぐぅぁぅ…


 クッそう!


 クソウ!


 チキショーウ!!」



 苦悶クモンの代償を喉の底より絞り出す。




「 それはっ!!


 それわぁぁぁぁあ!!


 ぐぐはぁぁぁぁぁ…


撤退ぃぃぃぃぃぃいっ!! 」





 と、絶叫一つ残すと、大事に担いでいた獲物を床に放り出しグルリ背を向け、屋上端へと走り去ってしまった。











 ─ 空気が少し軟らかい。


 水滴が、ゆっくりと時間を刻む…







 残された屋上では、あれほど強く吹き付けていた風雨も弱くなり、時折、切れ間から大きな月が覗いた。






 ─ 今宵コヨイは、満月。






 床に映る月にも、浅く車輪の波紋が広がるだけであった。


 人狼一人、逃しはしたが、今は拉致ラチされていた子の安全と確保が最優先と考え、追撃を止めた。




 この一連、少女達の連続失踪レンゾクシッソウ事件の一端には、


『 魔障 : マノサワリ 』が今夜、確認出来た。




 魔障マノサワリ… それは、魔物その物を指す場合と、怪事件に魔物がヒソみ、関与していると言った趣旨の総称である。




 これで、全ての失踪事件が解決した訳では無く、車椅子の少女の元には今件以外の捜索依頼が、まだ数件入っている。 改めて、魔障マノサワリの可能性を考慮しながら、慎重に他件の捜索ソウサクを進めて行かなくてはならない。



 事件の究明が急がれる…




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る