第1話 : 雨の秋葉街 ( 3 )




「なっ何だ! 何が起きてんだっ! 上じゃぁよ

 う! てぃへんだ!! てぇへんだ!!」


 レンチドコロの話では無くなった彼は、大声で周りにワメき散らす。




「何だ!何だ!どうした!!大声で喚いたりして!!」


 作業中の人々が手を止めて、大勢クレーンの周りに集まって来た。


 しかし、アマリりにも凄惨セイサンな光景が、一同から言葉を奪う。


 車椅子は、その中をカラカラと進み、まだ荷が吊られているクレーンのフックに少女がツカまると、そこへレンチで一撃。


 すると、ワイヤーで吊られていた建材の束は外れ、重りを解かれたそれは、彼女を連れ、元来た場所へと勢い良く巻き戻って行った。


「ガラガラゴロゴロガッシャーン!!」


 建材が乱れ落ちる音に、ハッと我に返った

 一人が、


「 ああっ 」 と空を指さす!



 少女は、弾かれた様に、グングンと加速し、天高く夜空に吸い込まれた。


「シュルシュルシュルシュルシュル!!」


 フックのワイヤーがウナり挙げながら、最上階に近づいた時、パッと、それから手を離し、前方へと飛んだ。

 勢い良く放り出された彼女は、山なりにを描いて屋上へと強く着地する。


 床に車輪が、めり込みケムり立つ。


 頭上後方では、クレーンフックが、収納口に速度を保ったままで衝突したのか、


「ゴガシャーン!!」


 火花をいて、大型クレーンを上下に激しく揺らす。



 ビル最上階にも同じく大型クレーンが鎮座チンザし、未だ半分の鉄骨が剥き出しになった床に、風が吹き抜け、ヒューヒューと、あちらこちらで鳴いているのだった。




「ガン!ガン!ガシ!ガシ!ガン!!」


 爪を打ち込み、打ち込み、とうとう屋上に登り着いた。


 降りしきる雷雨は、益々、この建物をギリギイガヤガリと執拗に揺らす。


 彼は、その床から、片腕を伸ばしハイい上がろうとすると、何やらクツの先らしき物に触れてしまう。


 反射的に海老反エビゾりとなり、後方へと跳ね退け、屋上床にせた体勢から周りをウカガった。


 前方には、雨に打たれ、ジッと、こちらを見据ミスエえる車椅子の少女が確認出来る。


 とは言え、彼女の瞳は、未だ閉じられたまま…


 屋上の建設用ライトで照らされ、初めて車椅子の少女の姿が、、分かる。



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