第16爆弾 アーティウォーク

 歩いていても景色はほぼ変わらない。ピンクよりの赤い色の空間はどこまでも果てしなく続く。


「アーティ大丈夫か?」

「うん、まだ全然へいき!」

「今大体50歩は越えたな。後150歩ぐらいで戻るぞ」

 アーティは歩いて来た方を見た。クエストとアーティの足跡だけが残っている。

「えっと200歩になったら帰るのを4回繰り返すってことだよね?」

「何かを見つけたら地図に書き込んでいくんだ。また飽きるかもしれないよ?」

「歩くのは好きだから飽きないよ!」

「そうか。なら良かった」


 150歩になった時だった。アーティが何かを見つけたらしい。

「木があるよ!実もなってる」

 道端に根っこから抜けた木が横たわっていた。その木に青っぽい実がいくつもぶら下がっている。


「これ食べられるかな?あたしは人造人間だからお腹壊すことはないけど…」

「まあ一応確認しとくか」

 クエストはその木に近づいて青い実を1つもぎ取った。

「パッチテストって知ってるか?」

「何それ?」

「人の肌にな、こういう実とかをこすりつけて害がないか確かめるんだ」

 クエストは自分の肌に実をこすりつけた。5分ぐらい待ったが何も変化がなかった。

「よし!これは食べられるみたいだ。リンスにも持って帰ろう」

「うん。みんなで食べよう!」

 アーティたちは青い実をたくさん摘んでクエストのリュックに入れた。


 そして、拠点から東に200歩、すなわち100メートル行った所で止まった。その場所にクエストがナイフで削った木の棒を突き立てた。


「これって目印?」

「そうだ。よく分かったな。こうやって目印を立てて分かりやすくするってことだ」

 クエストがアーティの頭をなでると、えへへという風に喜んだ。

「じゃあ戻るか!」

「うん!」

 それからアーティたちは拠点に戻った。


「アーティちゃん、あなた、おかえりなさい。何か見つかった?」

「じゃーん!」

 アーティは取ってきた青い実をリンスに見せた。

「まあ!これって食べ物じゃない!?どうしたの、これ?」

「えへへ…道に木が倒れててね、その木に付いてたの。すごいでしょ!」

「すごいわね!これだけあれば、しばらくは食べ物に困らないわね」

 クエストはリュックに入れた青い実を全て出した。

「アーティ、次行こうか!」

「うん、行こう!」

「もう行くのね。いってらっしゃい!」


 それからアーティたちは西と北にも同じ目印を立てて行った。

 そして残りの南に進んでいる時だった。

「あれ何かな?」

 アーティが指差した所には大きな物体があった。その物体は崩れて傾いていた。

「あれは鉄塔か何かじゃないか?」


 クエストとアーティはおそるおそる近付いて行った。近くまで行くと正体がはっきりと分かった。黒っぽい鉄と石が混ざったような素材の塔だった。建物の一部がそのまま飛んできたらしい。

「これは何かに使えるかもな…」

 クエストはその塔を触りながら呟いた。

「何に使うの?」

「それは分からないけど…とりあえず持って帰ろう」


 二人は塔の崩れた部分から棒と小さめの素材を拾った。そして、南にもまた目印を立てて拠点に戻った。

 アーティたちは戻ると、採って来た木の実を食べて眠りについた。アーティとリンスが中で並んで寝ているなか、クエストはテントの外で地図を眺めていた。


 まずは東西南北に100メートルの地図を作った。ここから広げていかないとな…。アーティとリンスには大変なことは任せられない。大変なのはおれだけで十分だ。


 それはいいとして…ここから出る方法はあるのだろうか?どうやって出るのだろうか?不安はある。でも探すしかない。探さないといつまでもここにいるようだ。そういう訳にはいかない。あがいてあがいてあがき続ける。それが生きるということだ。


「寝るか…」


 その頃ボムは、とある森の小屋でおじさんを手伝うことにした。

「わざわざ手伝う必要はない…休んでるといい」

「そういうわけにはいかないよ。拾ってもらった以上、何かを返さないと…」

「…好きにしろ」

 ボムは薪割りをしようとしている。そして小さい斧を振り上げて構えた。

「いくよ!はっ…!」

 ボムが斧を振り下ろすときれいに薪の真ん中に当たり割れた。

「やった、できた!」

「手際が良いな…やったことがあるのか?」

「ないけど、体が勝手に動いたよ!」

「そうか…」


 小屋のおじさんはボムの身体能力が高いことを察した。記憶を失う前も相当動けたのだと感心もした。

 それから途中で休憩することにした。

「まだ記憶は戻らないか?」

「うん…思い出そうとしても頭が痛くなるだけで…」

「そうか。まあ、無理に思い出さなくていい」

「でも、なんかすっきりしないよ。何で思い出せないんだろう?」

「想いが強すぎるとそれが抜けたりする。記憶を失う前に考えていたことが相当強かったんだな」

「強い想いか…おじさんって詩みたいなこと言うんだね!」

「…さあ、続きやるぞ」

「もしかして照れてるの?」


 その後も小屋のおじさんとボムは薪割りの続きをするのだった。

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