第11爆弾 ボンバーコーズオブランナウェイ

 博士は研究部屋にずっとこもりっきりである。

 硬めのベッドの上には人造人間の少女アーティが目を閉じて寝ていた。


 博士が機械をいじりながらアーティの身体の中を調べていた。


 頭の中の基板を外に出して内容を見た。

 特別おかしい所はなかった。


 次に胸を開いてハートストーンを確認した。すると、ハートストーンの端が少し黒ずんでいた。


「これは……!」

 博士がアーティの異変に気付いていた頃、ボムは研究所外の庭にいた。

 長い髪を振り乱しながら動き回っている。


 実はボムも爆撃拳を使えるのだが、なぜか弐の型だけしか使えないらしい。壱の型もやってはみたものの、発動しなかった。そして、壱の型ができなければ参の型は使うことができない。


 そのため、弐の型を極めることにした。


 弐の型はまず胸の前に両手で輪っかを作り足を肩幅に開いたあと、左足を前に右足を後ろに出す。次に右手の拳を斜め右前、左手の拳を斜め左後ろにして腕と足が十字になるようにする。最後にその場で時計回りに回ることで素早く動くことができるようになる。


 今までボムが危険な目に会わなかったのは、普段から弐の型を使っていたからだった。

 練習をし続け使いこなせるようになってから博士の手伝いをするようになった。


 ところで、研究所外の庭には木で作られた的が散らばって置かれてある。

 ボムは手に爆弾と同じ重さの球を持っている。


 爆撃拳―弐の型、天脚を発動させたボムは素早く的の周りを動き回った。手にした球を1つ投げ、的に当たって跳ね返ってきた球を再び取る。すぐにもう1つの球を投げ、跳ね返ってきた球を取ることをしばらく繰り返した。


 適当に動き回っているように思えるが、的に体が当たらないようにしながら一瞬で判断してよけている。ボムの長年の経験が身に染みついている証拠だ。

 かれこれ2時間は特訓していた。


 特訓を終えたボムはシャワーを浴びてから博士の研究部屋に戻った。

 研究部屋に戻ると、博士が難しい顔をしていた。


「博士どうしたの?難しい顔して」

「ボム、戻ったか。アーティの暴走の原因が分かったぞ!」

「えっ、本当!何が原因だったの?」

「この心臓部のハートストーンが黒ずんでいるじゃろ」


 博士はボムに端が黒ずんだハートストーンを見せた。


「おそらく、この黒ずみが暴走を引き起こした要因じゃろう」

「元に戻せる?」


 ボムはアーティを見ながら言った。


「ああ。この黒くなった部分を削れば元に戻る。じゃが、ハートストーンは大きさで出せるエネルギーが変わる。だから削るとエネルギーは減ってしまうんじゃ。まあ日常で困ることは無いと思うがな…」

「それでもいいよ!アーティが動けるなら」

「そうか。それならすぐに取りかかるとするか。しばらく時間がかかるから待っててくれ」


 博士が作業を始めようとし、ボムが研究部屋から出ようとした時だった。どこからともなく警報音がなった。


「この音は…次元竜がまた移動したか」

「どういうこと、博士?」

「実は、ボムと最初に会ったとき光弾を投げたじゃろ、その時に発信器もやつに付けたんじゃ!」


 研究部屋のモニターに次元竜の位置が示された。


「ここって…」

「ああ。ここから南東に10キロ行った場所じゃ。昔は採掘場として栄えていたが今は廃れて誰も近づかん…」

「博士。わたし、次元竜の所に行ってくる!行って決着をつけてくる!それで…お父さんとお母さんを取り戻す!」

「いや…今のボムでも勝てるかどうか…。とにかく危険じゃ!…それにボムの両親を確実に戻せるとは限らない!」

「お願い博士!危険だってことは分かってる。でも、今倒しとかないと他の犠牲者が出ちゃうかもしれないでしょ!だから行かせて。お願い!」


 博士はしばらく考えた後、思いついたように言った。


「分かった。じゃが行くならアーティと一緒にじゃ!1人よりはいい」

「ありがとう博士!」

「そうと決まれば、新たな爆弾を作ろう!次元竜を倒せるほどのな」


 博士とボムはそれぞれ次元竜を倒すために準備を始めたのだった。

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