TREDICI

※ 冒頭と終盤以外は第三者目線になります。



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「え、エド‥‥? 本当にエドなんですの‥‥?」


「そうよ。 ふふ‥‥ すごいでしょ?」



なんのことやらって思うでしょ? ふふふ、実は今、ワタシはリズの目の前でになっているの。



事の起こりはあのアイオスと練習試合をした数日後の淑女教育で、お茶会を開く際の手順とマナーの授業の時、講師のアマンダ女史の一言から始まったらしいわ。





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「――――― それでは課題として皆様一人一人が主催したお茶会を開いていただいて、その様子をレポートにまとめて提出してくださいましね。  提出期限は1ヶ月以内といたしますわ。  何か質問のある方はいらっしゃるかしら?」



アマンダ女史がそう言って教室の中をぐるりと見渡すと、元気よくガタンと立ち上がり、右手を高く上げて「はい! せんせー!」と言う声が教室内に響いた。 



貴族の令嬢として、『慎み』や『たおやかさ』は持ってしかるべき。 当然そう言った行為は注目されるのだ。 もちろん悪い意味で。 そして今、その注目の的になっているのは、ピンクブロンドの見目麗しい、アンジェリカ・フォン・アグウスだった。



――― ごらんになって、なんてはしたないんでしょう。 ――――


――― あの方‥‥ 最近王太子殿下と懇意になさってるって噂の方ですわよね。 ―――


――― まああ‥‥ あの噂は本当でしたの? ――――


――― なんでも市井の生まれらしいですわよ。 生まれが卑しいと言葉遣いに表れますわねぇ。 ――――



声を潜めて嘲けたり、くすくすと冷笑を向ける女生徒達。 あまりの出来事に一瞬驚き、固まっていたアマンダ女史も、気を取り直すと教室内のそんな様子を窘めた。



「コホン。 皆さまお静かに! アグウス伯爵令嬢。 元気があるのはよろしゅうございますが、 貴族令嬢としていささかはしたないですわ。 いついかなる時も優雅で気品のある行動を心がけて下さいましね。」


「あ‥‥ ご、ごめんなさい‥‥。」



アンジェリカは顔を赤くして俯くと、謝罪の言葉を口にした。 いたたまれなそうにしている様子に同情したのか、アマンダ女史がふう‥‥と溜息を一つ吐くと、先ほどより柔らかな言い方でアンジェリカに話しかける。



「それで、アグウス伯爵令嬢は何かご質問がおありなのでございましょう?」


「あ、はい! お茶会にお呼びするのは男子生徒でもいいんでしょうか? 何人くらい招待すればいいですか? あ、あと場所はどうすればいいですか?」


「”男子生徒” ではなく、”殿方” ですわね。 今回は親睦の意味合いもございますので、同級のご令嬢同士で行ってくださいまし。 どうしても人数が揃わない場合はご親類やお知り合いのご婦人でしたらよしと致しますわ。 人数はそうですわね‥‥ 4人以上といたしましょうか。 場所は学園内のカフェテリア、寮内のプライベートルームなど利用してくださいませね。」


「は、はいっ。 ありがとうございますっ。」



アンジェリカはほっとしたように息を吐き出すと、おもむろに横を向いた。 隣にはエリザベスが座っており、アンジェリカはにっこりと麗しい笑顔を作り胸の前で手を組んだ。



「エリザベス様! あの、お願いがあるんですが‥‥っ」


「わたくし、ですか? なんでしょう?」


「私のお茶会に参加してもらえませんか?! 私‥‥ まだあまりお友達がいなくて‥‥ 頼めるのがエリザベス様しかいないんですっ!」



伏し目がちに悲しそうに俯く姿を見てエリザベスの心が少し疼いた。


(言葉使いや立居振る舞いで噂になっていますものね‥‥。)



「わたくしでよろしければ、喜んで伺いますわ。 お友達にも声をかけてみますね。」


「ほんとですか!? ありがとうございます!」




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「~と言う事があったんですの。」



リズったらとんだお人よしだわ。 まあ、そこも可愛い所なんだけど‥‥。 しかしヒロインちゃんは何を考えているのかしら‥‥。 ちょっと気になるところが多すぎるわね。 ワタシもそろそろ本気で動いた方がいいわね‥‥。 差し当たりお父様とアノ人に手紙を送ろうかしらね。



「はぁ~~‥‥ なるほどね‥‥。 うーん‥‥‥ わかった、ワタシも行くわ。 そのお茶会。」


「ええ? 殿方は参加できないのよ?」


「ふっふーん。 だーいじょうぶよ。 まーかせて!」



さーーて、前世以来の女装ね。 何を着ようかしら‥‥。 ワタシの髪に合って体形をカバーできるドレスと‥‥。 瞳の色に合わせて淡いグリーンにしようかしら。 ノドぼとけを隠すのに喉まである襟元にして、デコルテラインは透け感のある総レースで男っぽい鎖骨周りを隠して‥‥ 袖は長めのパコダスリープにして、マーメードのドレスがいいわね。 あとはメイク。 メイク道具はどうしようかしら‥‥ ジョージに言ってペルフェーナのラインナップから持ってこさせようかしらね。 ふふ。やだ、楽しくなってきたわぁ~! 


ノリノリでドレスのデザインやら、メイクの確認やらしていたらあっと言う間にお茶会当日になっちゃったわ。 こっそり顔を髪で隠して侍女服を着て、女子寮のリズの部屋に入れてもらった。


髪色と同色のウィッグを作って緩めに結い上げ、ドレスを着てメイクを施せばあっという間に絶世の美女の誕生よ。 我ながらこの美しさ‥‥ マジで怖いわぁ‥‥。



「さあ、行くわよ! リズ!」

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