第21話

再び口を離したのはそれから数秒後だった。


「遥華!」


「うわっ!」


私は楓に押されて後ろに倒れた。その上にのしかかるように楓が私を見下ろしている。両手が私の頭のことにあり、私の足の間には楓のどちらかの足が入っている。長い髪が首からたらんと垂れ下がって来ている。


一方の私は大の字に近い状態で寝そべっている。肘からは上を向いて折れている。


押し倒された!?楓に!?私の頭は何人もの私が会議を行っているみたいに騒がしくどよめいている。


楓の顔はとろんとしていて、今にもエッチなことをしてきそうな目を光らせている。


「か、楓これ以上は。もう・・・」


自分の右手の甲を口に押し付けてガードをし、楓と目を合わせないように横を向いた。


けれどそれが無駄な抵抗と言わんばかりに楓は私の右手を退けて手に平を重ねた。恋人繋ぎだった。密着度が大きい分、より恥ずかしさが私を襲う。


そしてゆっくりと顔を近づけて来るので私は反射的に強く目を閉じた。


「もう、我慢できない」


耳元で囁かれた言葉に私は反応する暇すら与えられず、楓は私の口に三度目のキスをした。


「ん!」


私はさっきまでのキスと思っていた。ただ口を重ねるだけ。それだけでも十分に刺激があった。だからそれだけで済むと思っていた。でもその予想は楓によって裏切られた。


私の口の中に楓の舌が入ってきたのだ。これまで感じた事のない感覚、さっきのキスよりも大胆でエッチなキス。


「んっ・・ん、あう、ちゅっ・・・ん・・・」


楓からも私からもいやらしい音とともに喘ぎ声が聞こえる。頭の中は徐々に真っ白になっていく。


・・・もう何も考えられない。


楓の舌が私の舌をからめとる。時々私の舌を楓が吸う。すごく変な感覚。目すら開けられないほど体に力が入らない。体は暑く少しずつ汗をかいてくる。私はなすすべなく楓に襲われ続けた。


「はぁ、はぁ・・・」


楓がようやく口を離した。目はさっきよりもうっとりとしている。それは私も同じだろう。今も体に力が入らない。かろうじて動くのは指だけだった。


そんな私に楓は乗りかかってきた。


「かえ、で?」


頭が真っ白のまま楓に聞く。楓はあはは、とから笑いした。


「遥華ごめん、力、入らないや」


楓も私と同じ状況なのだろう。私は自分の白い天井を見た。いつも見ていた天井。それが今だけは別世界に見えた。


「遥華」


「何?」


「好きだよ」


「うん」


私が頷くだけでそれ以上は何も言わなかった。


私は今も迷っている。友達としてなのか、恋愛相手としてなのか。こんな激しいキスまでしていて今もなお、答えが出せないでいた。

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