第5話 映画とフィギュア②

「面白かったですねー。アンコマンはあの後チャレンジャーズに入るんですかね?」


「だろうね。ネットではアンコマンが皆をミクロの世界に連れてってタイムスリップする説があるらしーよ。」


「???そんなのでタノスに勝てるんですか?」


「ネットの深読み考察だしあんま信じてないけどね。元々が子供向けの話だしアメコミなんて設定ガバガバのグダグダ展開なんてよくある事だから後悔になったらご都合主義で大勝利なんて事もありうる。」


「へー。私はパッキーが消えちゃったからあんまし楽しみにしてないんですよねー。」


「パッキーはドラマ化の噂があるからひょっこひ返ってくるかもしれんぞ?タランティーマンも消えたけど次の映画も発表されてるし」


「それって公式でなかなかのネタバレじゃないですか。」


「アメコミなんてそんなもんよ。実は生きてましたーとか死んだのは実はクローンでしたーとか日常茶飯事過ぎて慣れると突っ込む気もなくなるぞ」


「それは(笑)あ、売店見ていきましょうよ。パンフレットとか買わないんですか?」


「んーパンフレットは別にいいかなー。まぁ、見るだけ見るか。」


「あ!コレいいじゃないですか。ダサめのTシャツ。」


「ダセぇ…いい歳してこのデザインのTシャツ着ていく勇気はないわな。お。[アメイジングレジェンド]売ってるじゃん」


「まーたフィギュアですかー。好きですねー。」


「うるさい俺の生きてく糧じゃ!…なんだ今回のアンコマンと敵キャラだけか。映画館としては懸命な判断たな。」


映画館の売店で売られている商品はそのシリーズ全てが置いてあるわけではない。売れ残っても困るしまして海外商品なら在庫を抱えてまで関係ないキャラも網羅する誠実さは必要ではない。商売としては至極当然である。


「なんかこのアンコマン顔違くないですか?」


「よく気づいたな!ハゲた弟子よ!」


「ハゲてないです」


「このフィギュアは映画公開に間に合うようにおもちゃメーカー[バスプロ]が映画側からコンセプトデザインをもらってそれを基に作ったから最終的な映画のキャラのデザインと違いが出てるのよ」


「それダメじゃないですか。映画と違うとか。公開してからじゃダメなんですか?」


「公開してからフィギュア化される事もあるけどそれは半年後とか一年後とかめっちゃ時間がかかる。というか、映画を観たテンションでこういうのは買いたくなるものだからそっちを取って公開に間に合わせるのを優先した結果がこの微妙に違和感を覚えるアンコマンだ!」


本当にこれはあるあるで、フィギュア好きからすると映画公開前に映画のフィギュアが手に入るのは嬉しいが「コレじゃない」が結構ある。最近では[キャプテンアメリゴ]の映画版フィギュアが劇中では盾を2つ装備していたにも関わらず発売されたフィギュアには盾1つというお粗末な事件が実際に起こった。強者は盾を2つ装備させるために2体買ったり自分で複製したという…


「日本でやったら炎上しそうですね。」


「日本だと仮面ダイバーとかそもそもおもちゃを売るための作品が多いから[バンバイ]とかが主導権握ってやってるからこういう事態はあんまなさげなんだよ。逆におもちゃバレっていうおもちゃのリリース情報から情報流出があるけど」


「さすがスズキさん詳しいですねー。で、買うんですか?買わないんですか?ヒノモトはお腹が減ってきました。」


「さっきポップコーン一人でほとんど食ってたろーが。とりあえず今回はスルーだな。アンコマンは原作版持ってるし。」


「じゃーご飯食べに行きましょー」


劇場で売られているグッズは結構な確率でその後も量販店や雑貨屋で手に入るものが多いので劇場限定のものかどうかを見分ける事ができるとよい。スズキはグッズの類いは滅多に買わない。自分の守備範囲が広くなりすぎると本来求めているフィギュア収集が疎かになるからと考えているからである。また、映画館に売られているフィギュアは真っ当な値段ではあるが輸入物の場合はもう少し安く買う手段はいくらでもあるのだ。




その後、スズキはヒノモトに焼肉を奢り、結果さっきスルーしたフィギュアの何倍かの金額を支払うことになる。

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