第45話

 俺が愛実ちゃんを見ると、愛実ちゃんが下着姿で布団の上に座っていた。

 月明かりに照らされて、愛実ちゃんの肌は綺麗だった。

 透き通るように白く、細い彼女彼女の体。

 俺は思わずそんな綺麗な体に見とれてしまったが、すぐに我に返って目を反らした。


「ま、愛実ちゃん……何をやってるの……」


「次郎さん……私もう我慢できません」


「やめてくれ……そんな事を言われたら……」


「良いですよ……」


「いや……君が良くても……」


「次郎さんは……私の事が嫌いですか?」


「え……そ、そんな話しは……」


「じゃあ……本当に好きですか?」


「……あ、当たり前だろ」


 愛実ちゃんの表情は真剣だった。

 愛実ちゃんはそう言いながら、俺の方にどんどん迫ってきた。


「次郎さん……好きな人同士がこういうことをするのって……当たり前じゃないんですか?」


「いや……そ、そうだけど……」


「私は次郎さんと……したいです」


 愛実ちゃんはそう言いながら、俺に抱きついてきた。

 下着のせいか、愛実ちゃんの体の感触が伝わってきた。

 愛実ちゃんは俺の事を力強く抱きしめながら、離そうとしない。


「次郎さん……私……次郎さんのことを愛しています……次郎さんはどうですか?」


「………お、俺も……愛実ちゃんは好きだよ……」


「どんなところが好きなんですか?」


「えっ!?」


 今日の愛実ちゃんはなんだか雰囲気が怖い。 下手な事を言ったら、近づくで押し倒してきそうなそんな感じだ。


「ま、愛実ちゃんは……その……いつも明るいからさ……一緒にいるとこっちも元気に慣れるとことか……」


「他には?」


「え!? あ、えっと……誰とでも打ち解けるのが早いとことか……」


「他には?」


「他っ!? え、えっと……シンプルに……見た目が可愛いとことか……」


「……そうですか」


 愛実ちゃんは俺に抱きつきながら、耳元で囁いてくる。


「私も大好きです……」


 そんな彼女の言葉に、俺は心臓が飛び跳ねるような感覚を感じた。

 そして愛実ちゃんは俺の膝の上に、向かい合うように座り、俺の唇にキスをしてきた。


「ん……」


「……ん……」


 短いキスだった。

 しかし愛実ちゃんはそれだけでは終わらなかった。

 愛実ちゃんは再び俺の唇に自分の唇を重ねて来る、しかも今回は舌を入れてきた。


「ま、まって愛実ちゃん!」


「あ……嫌……でした? ごめんなさい……」


「あ……いや……そうじゃ無くて……」


 俺は驚き、思わず愛実ちゃんを引き離してしまった。

 愛実ちゃんは寂しそうな表情で俺にそう言ってきた。

 俺はなんだか罪悪感を感じてしまった。


「次郎さん……やっぱり私となんて嫌ですか?」


「だ、だからそうじゃなくて……もう少ししてからでも……」


「………不安なんです」


「え?」


「次郎さんが私の事を本当に好きなのか……」


「だ、大丈夫だよ好きだって!」


「でも……私に魅力が無いから……次郎さん……私に何もしないんじゃ……」


「そ、それは違うよ!!」


「じゃあ、なんで私に何もしてくれないんですか!!」


 愛実ちゃんはそう言うと、下着に手を掛け下着を脱ごうとし始めた。

 俺はそんな愛実ちゃんを止めに入った。


「ま、愛実ちゃん少し落ち着いて!」


「だって……私は……次郎さんが……」


 愛実ちゃんはとうとう泣き出してしまった。 俺はそんな彼女を見て、深い罪悪感を感じた。

 俺は清く正しく付き合うことが、この子の為なのだと思っていたし、それが正しいと思っていた。

 しかし、愛実ちゃんにとっては違ったらしい。

 気がつくと俺は愛実ちゃんを抱きしめていた。

 

「……次郎……さん」


「ごめん……俺がもしかしたら……間違ってたのかもしれな……」


 俺は愛実ちゃんにそう言いながら、高井さんと玲佳さんの一件を思い出した。

 意地になっても良いことなんて何もない。 二人を見ていてそんな事を思ってしまった。 だから、俺も意地になるのはやめようと思った。


「愛実ちゃん……」


「次郎さん……私……」


 俺は愛実ちゃんにキスをし、愛実ちゃんを布団の上に押し倒した。


「本当は……俺だってずっとこうしたかったんだ……」


「ん……次郎さん……優しくお願いします……」


 月明かりに照らされ、愛実ちゃんの真っ赤になった顔が見えた。

 




「次郎さん……私……幸せです……」


「あ、あぁ……そう……」


「もう絶対に離れません……」


「それは良いけど………今度からは……ほどほどにして……」


 搾り取られてしまった。

 何がとは言わないが……。

 なんと言うか……高校生の体力は凄い……。 俺はそんな事を思いながら、深夜風呂に向かっていた。

 この旅館には家族風呂という、家族みんなで入れるお風呂がある。

 フロントに行って、予約が必要なのだが、深夜と言うこともあり、予約なしで入ることが出来た。

 フロントのお姉さんは凄くニヤニヤしていたが……。


「次郎さぁ~ん……お風呂まで一緒で良いんですか? また元気になっちゃいません?」


「大丈夫……多分もう無理……」

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