reborn
目覚ノ壱 another
『L……L……!』
なんだ? 私の頭に響く幼い声は? これは私の声か?
「ん」
『おきて、L』
目を開く。そこには小柄な少女……いや、小柄な私がいる。
「お前は……」
「ああ、よかった。めがさめたんだね! わたしはあなた、ちゃんといえばもうひとりのあなたなの」
「どういう事だ」
もう一人の私だと?
「あなたはけんきゅうじょのせいでひどいめにあってた。それからあなたのこころをまもるためにわたしはうまれたの」
「私を、守る……」
「あなたがねむっているときにわたしはあなたをまもってたの。おそろしいかいぶつから」
「怪物?」
「あなたのなかにいたかいぶつだよ? いまはもうおとなしくなってあなたのてのなかにいるけど」
「手の中……まさか!」
「くわしいことはあのおねえさんにきいてね。わたしはもうあなたにはひつようないからきえちゃうけど」
「待ってくれ! まだ話を……!」
「ごめんね。もうおわかれだよ。あなたはめざめちゃうから」
「そんな!」
「ばいばい、わたし。きっとなにもかもうまくいくよ! いってらっしゃい!」
少女にドンと背を押され、私は光の中へと飛び込んだ。
――
――――
辺りを見渡す。私はどうやら何かしらの装置の中にいるようだ。
叩き割って外に出るか? いや、この場合は大人しくしている方が都合は良いだろう。
ここはどこだろうか? 研究所か? いや違う、視界に捉えたエンブレムは研究所のものではない。おそらくはKのいる組織だ。
確か私はKと戦って、戦って、戦い続けて……あれは楽しい時間だったな。だがその後の記憶が無い。と、いう事は意識を失ったのだろう。
おや? 誰かが部屋に入ってきたな。
――ピピッ、カチッ。シュー……
「ハーイ、Ms.L。回復カプセルの寝心地は如何だったかな?」
「……悪くはなかった。ところでお前は?」
「ああ、すまない。自己紹介がまだだったね。私はドクトル、君を診ていたんだ」
「なるほど。礼を言わなくてはな」
「なーに、私とて君から色々とデータを貰ったんだ、礼などいいさ。むしろこちらから礼を言いたいくらいだよ」
「そうか。なら色々と教えてくれ」
「いいとも。何から話そうか……ああ、そうだ、まずは……」
それからこのドクトルという男の話が始まった。
はじめに私が担ぎ込まれた時の事、それから血液を全て浄化したという事、義手義足を着けたという事、そしてあれから1ヶ月が経っているという事。
更に……
「君が眠っている間にも君の意識には起きている反応があってね」
「起きている?」
「そうさ、これが実に興味深い。こういう場合は2つ目の意識があると考えられるんだがそれは表に出てこずにひたすら裏側で何かをしていたんだ」
「……それなら知っている。私にはもう一人の私がいたんだ。私を守る為だとあの子は言っていたな」
「そうかいそうかい。なるほど。それならその子には感謝した方がいいね。血液浄化の時も義手義足装着の時も拒否反応を抑えていたようだから」
「っ!」
なんて事だ……そこまでして貰っておきながら私は礼一つあの子に言えていないのか。
「君が何を考えているかはよく分からないが何かを知りたいならMs.Kに聞くのが一番早いと思うがね」
そうだ、この男の言う通りだ。同じ化物であるKならば或いは……
「分かった。義手義足、感謝する」
「お安いご用さ。服ならあのロッカーにある。使うといい」
「ああ。携帯端末も借りていいか?」
「構わないよ。それに大体の情報は入っている。Kには一応私から連絡しておくよ。出ないと思うけどね……」
「すまない。助かる」
では早く着替えて行くとしようか。
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