business trip

Calling21 肩書

「あら、楽しそうな事を。私もご一緒してよろしいですか?」

 近寄ってきた奴が声かけてきた。見た感じはただの研究員か或いは事務員の姉ちゃんか?

「ん? 私はこいつに愚痴ってるだけだが……んまぁいいや、アンタにも付き合ってもらうとするかねぇ」

「では失礼して」

「んーこれだと話しにくいな。テーブル行くか。別にいいだろ、研究部長さんよ」

「あ、ああ……」

 流石にカウンターで三人はやりにくい。にしても研究部長は萎縮しまくってんなぁ。


――


「……なるほど。KさんはLと手合わせがしたくて居場所を研究部長さんから聞き出そうと」

「そゆこと。でも知らねぇから愚痴ってた。なぁ研究部長?」

「そういう事になるかな……ところでその、貴女はもしかして『特務官』殿では?」

「あら、バレてしまいましたか。そうですよ。とは言ってもまだまだここでは新米ですが」

「とんでもない! 貴女の卓越したオペレートが如何に我ら研究所の戦闘部隊生存率を上げているかは周知の事実です」

 ん? 特務官だぁ? 何だ何だ、また変な肩書が出てきたぞ。

「そうだ! 特務官殿であればLの居場所を」

「お前より格上なのか? この姉ちゃんは」

「肩書では一応そうなります。Lの居場所……知らない訳ではないですね」

「おっ! マジか。なら教えて欲しいね」

「ええ、Kさんにならば構わないでしょう。あ、研究部長さんは席を外して頂きたく」

「わ、分かりました。では私はこれで……」

 いそいそ帰っていく研究部長をなんとなーく見送って姉ちゃん、もとい特務官に向き直る。しっかしどっかで見た事ある様な……

「なぁ姉ちゃん? 私らどっかで会ったことねぇか?」

「ふふ、どうでしょう。とにかくここでは話せませんので着いてきて下さい。場所を変えます」

「はいよ。情報あるならなんでもいいや」

 バーを後にして私らは更に上の階に歩を進めた。


――


「さて、ここなら大丈夫でしょう」

「ここは……アンタの自室か」

「はい。ちょっと着替えますね」

「ああ」

 奥に入っていった特務官の部屋をグルッと見回す。特に何かがある訳でもない。

 が、やけにデカいトランクケースと小奇麗に纏まった多機能デスクが気になる。

「この纏め方は……」

 そう呟いて手を伸ばしたところでドアを開ける音がした。


「やはりそこに気付かれましたか。まぁここまで引っ張れたなら上々でしょう」


 振り向いた先には……


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る