第11話 野生解放

セルリアン。この化け物が現れる要因も、行動原理もはっきりわかってはいない!強いて言うなら光走性か。それにしたって個体差が大きいようだ。わかっているのは、奴らはフレンズを喰う。その輝きを奪われたフレンズは動物に戻る。そしてセルリアンは、フレンズにしか斃せない。そのくらいだろうか。だが、アムールトラにはそれで十分だった。

アムールトラは振り上げた爪をセルリアンの背中に叩きつける。軽装甲車のボンネットに穴を開けるほどのパワーだが、あっさりと弾かれた。

「硬いッ」

やはり弱点である『石』を狙わなければ駄目か。だが、今は倒せなくていい。アグレッサー部隊が来るまでのつなぎでいい。ならば採る戦術はヒットアンドアウェイだ。縦横に動いて、セルリアンの気を引くのだ。

だが、アムールトラ一人では、気を引くにしても限度がある。あと一人いれば、交互に入れ替わることで、しっかりと撹乱できるのだが。

「アムール!」

カバが叫ぶ。小隊ではアムールトラに次いで若い。

「アグレッサーは駄目だ、当分身動きがとれない。背中は任せろ」

背中の言葉に、アムールトラは思わず振り返って驚いた。いつの間にか、小型セルリアンに取り囲まれていた。大型との闘いに夢中で、背中が疎かになっていた。

アムールトラはニヤリと口の端を持ち上げる。アグレッサーは来ない。自分でなんとかするしかない。ならば、出し惜しみしている場合ではない。

「野生…開放ッ」

静かに息を吐く。

自分が自分ではなくなる感覚。

思考が曖昧になる。

だが、感覚だけは研ぎ澄まされていく。

後はただ、本能に身を任せればいい。

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