第5話 準備まだ??(なげぇよ。進まなすぎんだろ)

 十二人の守護者トランプの一であるクダツは偉大なる御方から言われたことがうまく理解できていなかった。

 十二人の守護者トランプが十一人だと思っているのか、と聞かれたなら間違いなく全員がYESと答えるだろう。十二人の守護者トランプはここにいる十人とプエラを含めた十一人で構成されている。十二人の守護者という称号をいただいているのに十一人ということには疑問を持たない。偉大なる御方がそう決めたのだならばそれで正しいのだ。他の十二人の守護者トランプも同意見だろう。

 だが、先ほどの口調は否定するような口調であった。つまりは十二人の守護者トランプは十一人ではないのだ。そのことは伝わってきたがどこが違うのか見当もつかなかった。なので代表者としてそのまま返答することにした。十二人の守護者トランプがミゾン様に謁見したとき、代表で話すのも私の役目の一つだ。この回答は間違っているだろうが嘘をつくよりは断然いい。


「はい。十二人の守護者トランプは十一人であると思っておりました。もしや新しく増えるのでしょうか?」


 主からの質問に回答だけではなく予想を付けたのは無礼だと思ったが何も考えずただ言われたことだけをするのなら召喚したモンスターでもできることだ。私は十二人の守護者トランプだ。ノンソーロム神殿の上位者なのだ。これでいい。もしこれが不興を買ったとしても排除されるのは私だけだ。ほかの十二人の守護者トランプはほとんど話していない。それに代表として話すのならば私以外にもイリエボなど適格者がいる。

 果たして我々に臨まれているのは部下としては傀儡としてか。


「ふ・・・・」


 ミゾン様は何かをしゃべる前に微笑まれた。ならば疑問を呈したのは正解だったのだろうか?確定しないまま憶測で物を進めるのは危険だ。確認をとるために問う。


「ミゾン様。いかがされました?私めに不備がありましたならおっしゃってください。すぐに修正いたします」


「いえ。その必要はありませんよクダツ。私はあなたたちが人形になることを望んではいません。あなたたちを創ったアルクシィのメンバーもそう思っていることでしょう。その点クダツ、あなたはとてもいい判断です。十一人しかいなかった十二人の守護者トランプがそうでないといわれて即座にもう一人足されるという可能性にたどり着いたのは見事です。私たちが与えたものに甘えずよく考えました」


 二重のヴェールに覆われて非常に視認がしにくいため顔は見えないが、おそらく笑っておられるであろう雰囲気は伝わってきた。


「お褒めにあずかり光栄です。我ら十二人の守護者トランプ、よりミゾン様のご期待にこたえられるように精進いたします」


 常に精進し、成長し続ける。それは十二人の守護者トランプの中では常識だった。変わらなければ置いていかれ価値を失う。至上の御方たちがよくそうおっしゃっていたのを覚えている。

 必要とされない、それは自ら自分の存在意義を見出せない我々にとっては死と同義である。ゆえに改めて口にし誓う。同僚からも身に力がこもったのを感じた。


Tesテス。あなたたちの決意、しかと受け取りました。今後からその決意は省略するように。あなたたちが私の期待に応えようと努力しているのは明白。宣言しないことで誤解をするのではないかという不安は不要です。それより宣言する時間をほかのことに割り振りなさい。その方がより有益で私のためになります。いいですね?」


Tesテスタメント


 ああ、やはりミゾン様は素晴らしい。我々の心内を完璧に読み、ほしい言葉を下さる。ミゾン様についていけば何も恐れることはない。


「では、十二人の守護者トランプについてですがクダツ。あなたの考えは惜しいといえます」


 予想が外れていたことを悔しいとは思わない。至高の御方にかなうわけはないのだから。


「正解は元から十二人いたのです。ただ隠されていただけで。特別な理由があったとはいえ申し訳ありません。あなた方を信用していないからの行動と思われても仕方ありません。あ、謝罪は不要です。話を進めます」


 私は謝罪するタイミングを完全に読まれて初動すらできなかった。そのことに至上の御方との差を改めて感じている間にも主の話は続く。


「十二人目の存在を隠していたのはその存在、というより存在理由が特殊だからです。あなた方は強力な力を有し、侵入者に対して行使する存在です。それゆえ一度撃退した相手から対策をとられ次の戦闘では惨敗するかもしれません。ですが逆にあなた方がいるから攻めるのをあきらめようと思うものもあらわれるかもしれません。それゆえ、存在は隠さずあなた方のことを知らないものはこの神殿にはいません。」


 そのとおりだ。だがノンソーロム神殿には一度も侵入者が来たことがないため戦闘系の十二人の守護者トランプは皆やり場のない憤りを感じていた。私も戦闘系には及ばないが力を示す場がなく軽い焦りを感じている。


「ですが十二人目は存在を知られてはいけなかったのです。その存在理由はアルクシィメンバーの盾。いえ。身代わりというのが正しいでしょうか?となれば後はわかるでしょう?」


 当然わかる。だからうなずきとともに


「もし、身代わりになれるものがいると知られていれば効果は半減。そして我々も何かしらの方法によって口を割られるかもしれない。なら知らなければそのリスクもない。というわけですか」


「その通りです。ですがまぁ、貴方ならとっくにわかっていましたよね。わざわざ説明ご苦労さま」


 もったいなきお言葉、そういいながら頭を下げるとき「今はこの程度でいいか」という主の言葉を聞いた。

 つまり、十二人目の守護者はただの身代わりではないということだ。それも十二人の守護者トランプにすらいえないほど重要な役割がついているということだ。

 どれほどの信頼を手にいれたなら我々にお話ししてくださるのだろうか。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 教皇椅子のミゾンはクダツと話しながら焦り続けていた。

 あ~、もう!なんでこういちいち部下の言ったことに口を挟んじゃうのかなぁ~!!これだと話を区切りまくってそのたび小言を言ってなかなか本題へ行かないくそ上司じゃないか!!しかも口調というかキャラも結構ぶれちゃうしもう最悪。

 誰か助けてよ!

 けどまぁ、何とか紹介前までには行けたかな?結構NPC考えるのね。てっきり何も考えないで人形みたいな存在なのかと考えていたが普通に人だった。

 これはこの先私の無能がばれた瞬間反逆される可能性が高いことも示していた。逆にうまくいけば私が何もしなくても意をくんで動いてくれる優秀な部下になる可能性もあるということだ。

 私はなるべく考えて動くリーダーにはなりたくはない。なるならこうしたいと意思を決めるリーダーがいい。つまり方針だけ決めて後は放置。無責任かもしれないが私はただの一般市民だよ?何を求めてるの?と誰もいないが心の中で聞いておく。

 十二人の守護者トランプの反応を見る限りそこまでひどい態度にはなっていないようだ。のちのちキャラづくりは強化するにしてもまぁ、「今はこの程度でいいか」。

 意識しないうちに口を開いてしまい、慌てて手を口に当ててしまいそうになるが指が震えたところで抑えきる。口に手を当てるなど笑う時以外にすべきではない。

 クダツを見ても反応はない。だとしたら聞こえなかったのだろうか。なら助かった。だがもしものために何かつなげられるストーリーの制作も急務か・・・。


「では、十二人目の紹介と行きましょうか。彼女を今紹介する理由はあなたたちへの信頼の証明。および連携の強化を願ってのことです」


 教皇椅子を隠しているヴェールを開けるイメージをしながら右肘より先を振る。私のイメージに従いヴェールが開かれ十二人の守護者トランプが鮮明見えるようになった。


「彼女の名前はリーチナー。私の近くで動いてもらう予定のものです。さぁ。でてきなさい」


 足元の影が質量をもち膨らみ始めた・・・・・



―――――

2019.05.27 読みにくかったと思うので書き方をいくつか変更しました。

      ・段落の導入

      ・台詞の前後に一行開ける


      こちらの手違いでNPCの名前を間違えて投稿してしまいました。即時

      訂正いたします。

      アーミラ⇒ジェンフィー


      これからも今作品をよろしくお願いいたします。

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