#30





 ●





 彼の濡れた幹を、エリは片手でつかんだ。やさしく。やわらかく。

 柏木が、小さく、ため息をつく。

 エリはそれを受容の合図とみた。それを握り、濡れた先端を自分の脚の付け根の肌にそっとこすりつけた。

 熱をもった彼を、その素肌に押し付けるだけで、身体が開かれてゆくのを感じる。


 エリは闇のなかで柏木の唇を求めた。

 エリの舌が、柏木の唇を見つけだす。彼を甘く握りながら、舌を伸ばし、彼の舌を吸った。

 柏木はエリをかき抱いた。そしてその手がエリの股間に伸びた。たっぷりと蜜を含んだエリのスリットに、柏木の中指がしのんでくる。そっとそこに指を這わされるだけで、彼の口のなかに、甘色のため息が漏れてしまう。

 柏木の幹とエリのスリット。

 それぞれがそれぞれの熱い箇所を指先でまさぐりながら、魂が溶けるようなキスを続けていた。


「ねぇ…」


 キスの谷間で、エリが言った。

 柏木は何も言葉を返さない。でも彼がその続きを待っているのが、エリには分かった。


「あなたをずっと…探していたわ。もう長いこと、待っていたの」


 ため息のように、エリは気持ちをやわらかく漏らしてゆく。こんなこと、ずっとなかった、とエリは思う。あの年上の人以来、ずいぶんなかった。

 柏木は答えない。

 ただ、エリの中に、その指先をそっと、侵入させてきた。

 中がキュッとすぼまり、


「あぁっ」


 声が漏れてゆく。

 溶けたエリの中を柏木の指がうごめく。

 何も答えてくれなくていい、甘い言葉など、少しもいらない、とエリは思った。

 こうして肌を合わせているだけで、他では味わえないような幸福感に身も心も溶けてしまいそうだから。


 エリは指先で柏木の張り詰めた先端をやわらかくマッサージする。指先に彼の蜜がついて、それが先端の素肌をなめらかにする。

 柏木の指が彼自身のごとくエリの中をこねるように、エリもまた、柏木の幹を包み込み、指先でつくったトンネルで彼を何度もこすり上げた。


 最初の時とは全然違う、とエリは思う。

 あの荒々しさはいまは少しも感じられない。


 柏木が身を起こす。指先がエリのなかを離れ、彼女の指もまた、彼の幹から離れる。

 彼の両手が自分の左右の太ももを大きく割るのが分かった。

 そう、そうよ…。

 エリは求める。

 柏木とつながることを。

 彼とひとつになることを。




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