サウナ⇔水風呂の温冷交代浴

サウナに入った後には、水風呂に入るのが良いとされている。この「良い」というのは、健康に「良い」面と、気持ち「良い」面の2つの面がある。実際、おじさんも水風呂が大好きだ。なぜなら気持ちいいんです。サウナ好きの中には、むしろ水風呂こそがメインだと言う考えの方も少なくない。


まずは健康面の方の仕組みを見てみよう。


サウナで蒸されたばかりの時点では、体温は当然のことながら高くなっている。きっと表皮も火照っている事だろう。汗腺は開いて汗を出し、血管も拡張して表皮近くまで膨張し、なんとか熱を外へ逃がそうと頑張っている。


そこを冷たい水で一気に冷やす。すると表皮は冷え、先ほどまで体温を下げようと頑張っていた表皮周りは、体温を外へと逃がさないためのモードに入り、汗をかいていた汗腺は閉められ、血管も収縮し、冷たい表皮から遠ざかろうとする。


サウナ後の水風呂というのは、このような効果がある。ざっくり言ってしまうと、汗をかく程に温まったり、普段味わうには憚られる程の温度で冷えることで、冷暖房の整った環境ではあまり働く機会のない、交感神経と副交感神経の2種類のセンサーを意識的に働かせ、鍛えることで、気温や環境の変化にきちんと対応できる健康な体にしていこうという狙いがあるのだ。


つまりは、「極端に熱い」「極端に冷たい」の2つの状態を経る事で健康になっていこうぜ、という事だ。大事なのは2つの状態を経る事。サウナだけに入っても、もちろん体を温める温浴効果はあるし、発汗によるデトックス効果もある。だが、水風呂に入ればそれに加えて、プラスアルファの効果を得られる、というわけなのだ。


ちなみに、このような「温かい」と「冷たい」を交互に繰り返して入浴する入浴方法を「温冷交代浴」や単に「交代浴」「交互浴」などと呼ぶ。サウナと水風呂がマストというわけではなく、熱めの湯舟とぬるめの湯船でもOKだ。


さて、ここからは気持ち「良い」の方の話だ。


おじさんは元々、「サウナは熱いだけ」と思っていた。が、この交代浴の話を聞いて、成程、と思ってサウナに入り水風呂へと入ってみた。みたのだが――。


超冷たくて全然入れませんでした。無理。入れるわけないじゃんバカなの? しかもこの時、おじさんは一人で来ていた。隣に知り合いがいれば「無理無理!」などと言ってひと笑い取って去る事もできるのだが、それができぬ。


結果、おじさんは超冷たいのを顔に出さないよう、そっと水風呂を離れ、洗い場まで何事もなかったかのように歩き、腰かけ、ぬるめのシャワーを浴びる事となった。


しかし、ここで引き下がるのはおじさんが廃る。その後、足元だけ冷たいシャワーを浴びる、全身冷たいシャワーを浴びる、足先だけ水風呂に漬けてみる。水風呂の水を被ってみる。等、ステップを踏み、遂におじさんは水風呂に浸かったのだ。


正直言って速攻出たいほど冷たかったが、せっかくなので肩までぐっと浸かり、10秒ほど数えてみた。すると、不思議なことに入った直後の冷たさが薄らいでくる。あれ、なにこれ。これが「サ道」という漫画で読んだ「水の衣」という現象(※暖かい表皮の周りの水が温められ、それほど冷たくなくなる現象)なのかな、なんてびっくりしながらもう10秒ほど浸かった。そのあたりで足先が超冷たくなって水風呂から上がった。


すると、水の中に居る時よりも、上がった時の方がさっと火照った体に清涼感が広がり、とても気持ちいい。なんじゃこれ、と思うもそのまま何事もないように洗い場まで行き、椅子に腰かけた。


表皮付近は良く冷えていて気持ちいという感覚はあるが、体の中は温まっており、なんとも爽快な気分だ。ああ、水風呂が気持ちいいってのはこれか、と腑に落ちた。納得だ。その後、おじさんは積極的に水風呂に入るようになっていった。


最近では、1~2分くらいは浸かっているほどだ。足先しか入れなかったおじさんだが、今では首筋まできっちり浸かる。許されるものなら水風呂にもぐってしまいたいが、衛生的な問題で潜るのはNGという施設も多い。顔にバシャバシャと水をかけて存分に冷たさを味わってから上がるのだ。


水風呂は、最初は入るのは躊躇するかもしれない。でも、ぜひ、入ってこの気持ちよさを体験して欲しい。サウナの楽しみが一気に広がるのが交代浴なのだ。


そして、まだサウナにはその次がある。サウナ、水風呂、その次はそう、休憩だ。


この休憩がまた最高なのだけれども、それはまた次の機会に。

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