31話 対策

「本日二度目のただいま」


「ん、お帰り〜。弓月ゆづきは?」


「あー。帰ったよ」


「そうなんだ、珍しい…それと、ほれ。アイチュ寄越せ」


僕はアイスと飲み物が入ったビニール袋を片手に莉奈りなに近づいていった。


「ほれ」


ペチン。とちょっと広い莉奈りなのおでこが赤くなっていた。理由は僕がデコピンしたからであります。セミロングの髪がサラサラッと動くのを正面に額を抑えて僕の事を半睨みしながら「イタッ」と言った。


「さて、もう一度。買ってきてやったんだぞ?寄越せなんて言い方だと僕が食べるのは確定やねん」


そしたら渋々といった様子でペコリンちょと頭をコテっと下げた。可愛いぞ。


柚和ゆわ、ありがとう。ちょうだい」


「ほれ」


ハーゲンダッツのいちごをポンと手の上に置いてやった。「冷た!」と言ったけど表情は動物さんだ。コアラみたいな顔。


「ふふふ、持つべきは兄やね」


「どうも。僕は疲れたからもう莉奈りなの相手しないで寝るわー」


「おい!兄助、まだ6:30ぞ?夜ご飯作ってよー」


「もうそんな時間なんだ…5:00に向こうについてからそんなに時間が過ぎてるとは思わんかった。それと夜ごはんは今日はお前さんや。風呂と洗濯はやっとくから飯はよろしく」


そう言って僕は早々に風呂場に向かって軽くシャワーで湯船を流してからお湯をはった。


その後に八畳間の部屋に置いてある二人分の洋服が入った洗濯籠を洗濯機が置いてあるとこまで持っていく。


ちなみにうちは二階建ての一軒家で一階には四畳の浴室と六畳半の居間がある。リビングは五畳だった気がする。僕の家はリビングと居間は併設してない。それにうちはリビングのこと台所って言ってる。


そのほかにもう一部屋六畳の和室がある。二回は僕と莉奈の部屋だ。確か…どちらも五畳半だった気がする。勿論、トイレもある。


意外と三人で暮らすには勿体ない広さ。まぁ、実質二人で住んでるけど。それでも毎週掃除はする。


「さて、と。分けないといけないんだけどこれまた難儀なんだよな。莉奈りなの下着がなんせあるし…別になんとも思わないけどこれは周囲から見たら異常なんだろうなぁ…。ま、いつも通りやっていこう!」


白物は分けて洗濯機の中にアタックとレノアを入れて標準コースでスイッチオン。


すぐに洗濯も風呂も終わってしまったので何もすることがなくなってしまった。

莉奈りなの料理の進捗を伺おうと台所に顔を出したらパクッと口に熱い揚げたような味がした。…これは唐揚げだ。


「味見してみていかがですか?」


「うむ。素晴らしい。あれ?て、あれ?もう料理終わったの?」


「今日は軽いのしか作ってないからね。楽ちんよ。ほら、さっさと食べよ」


お椀にご飯をよそり、小皿や大皿に唐揚げやきゅうりの浅漬けや小松菜のおひたし

に豆腐と麩とワカメが入った味噌汁が並んで行く。


「並べるの終わりー!よし、食べましょ食べましょ」


「おう」


莉奈りなと僕は手を合わせて


「「いただきます」」


と言った。なお、食レポは心の感想文にまとめてあります。一言、味噌汁味が濃すぎて僕には合わなかった。唐揚げは揚げ具合が丁度よくしっかリ油がのってたからすごい美味しかった。これが今回の僕の一言だ。


美味いと言ったら「いやん、テレる」なんてデレデレしていた。


「風呂どっちが入るー?」


「あ、んじゃあたし入るわ。今日は眠いからもうお風呂入って寝たい」


「そうか。なら、はよ入ってこい。お湯はもう張り終わってるはずだから」


そう言うや否、ベルメゾンのチェストから下着と学校の体操着に軽いポロシャツを出し、お腹に抱えて風呂場に直行していった。


「忙しいやっちゃな」


ポツリと口からそんな苦笑も相まった言葉が出た。


今の内に皿洗いを済ませておく。でも、手だけ動いていて頭は他のことを考えていた。今日の家庭教師を見る限り、両親の方も理解が足りない親だと言うことは十分というレベルで伝わってきた。


一先ず、杏菜あんなさんには僕が使ってる問題集をひとまとめにして貸すことにして期末テストは点数を取らないとマズイ。


二人分の食器なのですぐに洗い終えたと同時に浴室の方から「バン!」と扉が閉まる音が聞こえたので莉奈りなが風呂を出たことがわかった。


「出てきたよー」


「カラスの行水だな…5分も入ってないじゃん」


「えーだって、逆上せちゃうし」


え?温度は確か45度でシャワーは60度だった気がする。逆上せるほど熱いはずはないと思うが取り敢えず、莉奈りなが上がったので僕もすぐにベルメゾンの焦茶色のチェストからパンツと体操着の半ズボンに薄い生地のTシャツを取り出してお風呂に入った。


ここからはよく覚えてない。理由は明快だ。風呂の温度が60度で逆上せたからだった。シャワーと湯船の温度が逆というアホ染みたドジだった。



♦︎朝



眼が覚めるとツートンのソファの上で寝ていた。毛布は莉奈りなが掛けてくれたのだろう。きちんと被っていた。ありがとう。


朝6時起床。すぐに着替えてTシャツを脱ぐ。それで学校の体操着で白い服をきてその受けにワイシャツで学ランを着込んだ。学ランは伝統を感じられるから僕はあまり嫌いではない。好きでもないけど。それで、黒のスラックスを穿いてこれまた黒い革ベルトを着けて穴が空いているところに銀色のなんだろう…なんか変なものを入れる。


学ランをきて気づいたが飯を作るから一度、学ランを脱ぐ。ボタン式だ。


朝ごはんも作って、準備もして、莉奈りなの寝顔をチェックして、僕は家を出た。


一先ず、学校に朝イチで着いて勉強をすることにした。学校に着く頃には6:30になってる頃だろう。


今日は自転車で通学だ。スタンドを蹴って鍵を回してロックを外し動けるようにして前カゴにリュックをポンと入れてハンドルを握ってヒョイとサドルの上に跨がって動き始めた。


途中途中、過ぎ去っていく車で黒のベンツを探しながらペダルからチリチリと音を鳴らしながら漕いで行く。


「今日も会えない、か」


朝の空気澄んだ空気にすぐに馴染んで今吐いた言葉は雪のようにすぐに溶けた。


学校に行ったら2組から4組までのメンバーを把握しなくては。

人を選んでそれが当分の僕の課題。


そのまま何事もなく学校に着いたのだった。


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