むかーしむかし。昭和の風景①

 チョコ林檎さん(娘)曰く

「日常を知らない」

 との事で。確かに、チョコ林檎さんの一日を考えるに……朝、学校へ行きます。教室には、そんなに気心の知れない、生徒と先生がいます。家に帰ります。家で好きな事をしています。色々やって、寝ます。うーん。サラリーマンやОLのスケジュールみたい。家族っていったって、四六時中くっついてるわけでもないし。友達と遊ぶには、平日は時間が無い。そもそも、日常って何だろう。


 異世界ものの小説には、昭和ファンタジーみたいなものがあるようです。チョコ林檎さんから聞いて、初めて知ったのですが。私にとったら、なんでそんなのがファンタジーになるのか分かんないのだけど。どうやら、昭和を知らない世代にとっては、ある種のファンタジーに思えるみたいです。なので、私が子供の頃の話でも書いてみようと思います。


 そうだなあ。地面が無いと書けないんで、昨今の児童虐待死問題からつらつらと話そうかな。

 私の育った環境というのは、まあ、今でいうネグレクト(育児放棄)だったんですが、さらに家にはアル中でパチンコ狂いの電気工事士の父親に、水商売上がりで喧嘩っ早い母親がいたんですね。で、学校から帰って冷蔵庫を開けると、ビールしかない。家ン中をあれこれ探すんだけど、何もない。引き戸の溝を鉛筆とか定規でほじくると、小銭が出てきたらラッキーで、駄菓子屋に直行しましたね。


 母親っていうのがまたアレな感じで、友達と部屋に入ると、エロアニメ観てるんですよ。ちなみに家は、六畳二間でした。で、上映を中止しないという。そして私は私で、そういうのをネタにして笑いまくってたんですが、何だろうなあ。まともな家の子には、変な子だと思われていただろうなあ。自然と、同じような家の子とつるむんだけど、そいつがまた何だろう。まとも組の人らと仲良くしたいから、私の悪事をバラして面白おかしく語るもんだから、よく喧嘩になりましたね。喧嘩しても、また遊ぶんですが。


 そんな環境で、よくグレなかったというか、まだ人間らしい生活が出来てるのは、近所のオバちゃんのおかげですね。近所の人は、何かと気にかけてくれていました。ご飯食べさせてもらったり。話を聞いてもらったり。親に一言言ってもらったり。あのオバちゃん達っていうのは、今だと80代か70代なのですが、戦後の貧しさなどを知ってる世代でね。可哀そうな人を見ると、放って置けないような人が多かった気がします。相当お節介だし、欠点もたくさんありましたよ。延々、生い立ちの悲劇を聞かされるとか。子供が聞くような話じゃないような、凄まじい内容などもありました。ただ、そういう欠点がある人特有の、優しさがありました。


 思うに、虐待する親というか、そういう機能不全家庭の周辺が、変わったんだと思います。お節介なオバちゃんが減ったというか。仕方ないんですけどね。あの頃の年寄はどんどん要介護になったりしてるし。他人の不幸に同情するような、苦労人って今どき、希少種というか。それに、苦労というか不幸な目に遭うにしたって、そっからグレて犯罪者になる人もいるのだし。


 何か、昭和の話とはだいぶズレてしまったんだけど、昭和の雰囲気というか、あの「情」の世界というか、独特の暗さや明るさの背景には、戦争があった事は間違いないのだし、そういう時代を生きた人がいたのも間違いないのです。


 あの空気を書くとしたら、どうだろうなあ。やっぱり、主人公は子供だろうな。大人を主役にすると、話が暗くなる。でもって、学校が出てきた方がいいな。今の子供は、友達付き合いで疲れてるだろうから。喧嘩しないように、気を遣ってる気がする。大人みたいに。もっと、野生的でもいいのになあと思うけど、今の時代には色々と、許されないだろう。例えば、喧嘩して引っ掻くとか。怪我なんてもってのほかだもんね。唾つけて直しとけ、とかいう親、いないもんなあ。


 という事で、今回はここまでとします。ではまた。


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