第十七話 絡まる罠
自分たちが独占してきた場に浮民が踏み込んだことに表立った反対はしないものの、無言の不満と怒りが柊に浴びせられる中、浮民部隊による鬼民の取締りが始まった。
――たとえ僅かでも、一歩一歩進めていけば、状況は良くなる。
柊はそう信じた。
――苦しくとも、必ず成果がでる。
そう信じて耐えた。
しかし、そうはならなかった。
優人は慎重の上にも慎重に事を進め、有力者たちの尾を踏まぬよう、細心の注意を払った。後ろ盾のあるものには手を出さない、結果として、捕らえることができるのは、鬼民の中でも最下層のものだけだ。そして、それは新たな不満の種となる。
悪いことをしたのだから罰せられても当然だ、とはならない。たとえ悪事であっても、同じことをして罰せられるものと罰せられないものがいれば、不公平だと人は思う。全くもって理不尽だが、それが人だ。
なぜ下々の者だけが捕らえられる、なぜ有力者は捕らえられない、だんだんと不満の声が大きくなり、柊を苦しめた。
そんな空気の中、浮民部隊による取締りが始まって、およそ三ヶ月後、浮民の子どもが惨殺されるという、凄惨な事件が起きた。こうなっては浮民も収まらない。なんとしても下手人を捕らえよという声があがる。
そして、調べにより一人の鬼民が捕らえられた。慎重に裏を取り、有力者へのつながりがないこと、この男が下手人に間違いなく、この男自身も自分がやったと白状したこと、あまりにも残虐な行為で慈悲をかける余地が全く無いことから、優人はこの男を死罪とした。
しかし、これは梟の罠だった。
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