真☆ハイペリオン登場!

「ノノノノラベル将軍! なななな何だアレは!?」

「あのシルエット……アレはコード:ハイペリオンです。本物に間違いありません」

「何だと!? あのポンコツ戦車が本物のハイペリオンだったと言うのか!?」

「はい。私たちはその本物のハイペリオンを再現すべく突貫でこの機体を制作しまた。しかし、十分な時間もなく異国の地でもあり、このような不完全な機体となってしまいました」

「下半身がキャタピラだからな。私が脚がないと指摘したときに将軍はなんと言った?」

「脚は不要と言いました」

「そうだ。そして『偉い人には分からんのです』とも言ったな」

「ええ。もちろんネタですけれども」

「何という事だ。私はこのガンタンクもどきが完璧だと信じていたのか?」

「現状可能な範囲で最も高い能力を発揮できるとご説明ジオングに対するセリフをガンタンクに言った事に疑問を持って欲しかったしました。事実、エクセリオン級を圧倒的に上回る戦闘力を発揮し、しかも、この界隈では無敵でした」

「ゾンビ相手に無敵だと自慢するのも恥ずかしいな」

「専用に開発した弱装焼夷弾は効果的でしたね」

「そうだ。対ゾンビ用には最適な弾薬だ。35㎜や25㎜だけでなく、20㎜や12.7㎜、7.7㎜、ついでに5.56㎜まで造りおって」

「ふふふ。NATO規格です。もちろん、コロニー奪還のために対ゾンビ用焼夷弾として広く配布しております。これらの弾丸、砲弾は人体を貫通せずに留まり発火するのです。射程は短くなりましたがゾンビ相手には効果は絶大です」

「なるほど。バラモット様の王国を死守するための装備と言うわけだな」

「ふふふ。同時にバラモット達吸血鬼に対しても有効な弾丸なのです。傷、主に裂傷に関しては治癒が早いのですが火傷に関しては時間がかかる。そして同時進行で燃焼する弾丸は更に治癒能力を減衰させる……」

「ノラベル将軍。貴様、それはバラモット様に対する敵対行為だ。何てことしてくれたんだ!」

「何を今更。私が忠誠を誓うのはアルマ皇帝。そしてその御息女であらせられる総統閣下であります。バラモットのような下賤な者を王と仰ぐ感情など、私の中には存在しません」

「この裏切り者!」

「裏切り者は貴方ではありませんか。アリ・ハリラー党のみならず、アルヴァーレのメンバーやララ室長まで巻き込んでおいてその言い草。元締めが異世界温泉ツアーの募集にかかわっている時点で何者かに精神支配されている危惧はあったのです。何かおかしいと。それが確信できたのはこちらアッシュワールドへ到着してからでした」

「私は、私は何もしていない」

「そう思い込まされているだけなのです。自動人形の疑似霊魂を汚染したのも貴方であることは確認済みです」

「私は! 私はどうしたらいいのだ」

「今すぐミスミス総統とララ室長へ謝罪し降伏することです。それでも許される保証はありませんが、戦って死を選ぶよりは現実的な選択だと考えます」

「き貴様、そのような暴言は許さん。死ね!」


 パン! パン! パン!


「ぐはあ!」


 拳銃を抜き発砲したアリ・ハリラー。その銃弾はノラベル将軍の胸に吸い込まれた。


「本気で……総統閣下と……事を構える……と」

「当然だ! 裏切り者はどこへでも行け!」


 アリ・ハリラーが機器を操作した。ノラベル将軍は脱出装置によりハイペリオンの背から排出された。座席ごと上空に打ち上げられ、パラシュートを開いて降下していく。


「何か内輪もめをしていると思ったら……一人脱出しましたよ、姉さま」

「そうね。ララさん。あれは……ノラベル将軍? ゲップハルト! 救助しろ」

「了解」


 ガンシップは急降下をし、緑色の牽引光線トラクタービームを放つ。それは射出座席を捕らえた。座席ごとガンシップ内に収納される。


「ノラベル将軍の回収に成功しました」

「こちらハルト君です。将軍は……銃で撃たれています。出血多量で重体です」

「分かった。ガウガメラへ帰還し医師の手当てを」

「了解」

「そしてお前たちは新型の装備を受け取れ」

「新型装備?」

「行けば分かる」


 ガンシップは後方へと下がっていきそして地中へと姿を消した。


「ノラベル将軍……大丈夫でしょうか」

「大丈夫です。ガウガメラ艦内には治癒能力に優れた法術士が着任していますから」「吸血鬼対策でしょうか?」

「そういう事ね。さあこれからが本番よ。ララさん降伏勧告ね」

「了解」


『こちらは内閣魔法調査室室長、ララ・東条・バーンスタインである。アリ・ハリラー党元締めアリ・ハリラーよ。即時降伏せよ。貴様の生命は保証してやる。貴様は既に一人となった。もう抵抗しても無駄だ。降伏せよ』

『私は降伏など。私は私の私による私の為のハーレムを作るのだ。バラモット様は私に約束して下さったのだ。好きなだけ作れと。そして協力は惜しまないと』


「拒否してきましたね。姉さま」

「そうね。概ねジーク・バラモットに操られているのでしょうけど、何と言うか、アリ・ハリラーの願望・欲望に付け込まれた感があるわ」

「付け込まれた?」

「そうよララさん。簡単に言えば、ジーク・バラモットはアリ・ハリラーの持つ欲望を増幅させたのよ。その欲心をがっちりと掴まれた」

「アリ・ハリラーは欲まみれの腹黒坊主だったわけだ」

「そうね。それと比較してノラベル将軍は立派だと思うの」

「高潔な忠誠心がバラモットの支配を拒絶したと」

「その通り。銃で撃たれたって事だけど、大事がないといいわね」

「はい。ではやりますか、姉さま」

「そうですね。ララさん。真・ハイペリオン、高機動戦闘モードへ移行。白兵戦用光剣を抜刀」

「光剣抜刀」


 真・ハイペリオンの右腕から光の刃が伸びる。そして、駆け足でハイペリオン・アッパーとの距離を詰めてきた。


「AIアケヒト。発砲しろ」

「距離が近すぎます。近距離用の機関砲は残弾がありません」

「滑腔砲だ。撃て!」


 ハイペリオン・アッパーの右肩に装着された150㎜滑腔砲が火を噴いた。

 しかし、真・ハイペリオンはその弾道をかわし、光剣で滑腔砲の砲身を切断した。


「AIアケヒト。ミサイルだ。ミサイルを撃て」

「距離が近すぎます。発射不能です」


 真・ハイペリオンはハイペリオン・アッパーの首を切断。そして両肩から腕、胸部にかけ三度切断した。

 ちょうど胸部にあるコクピットの天井をから上を切断した格好になった。自分の上側がすべて無くなった事にアリ・ハリラーは仰天していた。


「なんて危険な。私を切断する気だったのか? ララちゃま!?」

「吸血鬼に精神を支配され、ハーレムだハーレムだと繰り返す全人類、いや全女性の敵だ。この大馬鹿者アリ・ハリラー!!」


 この期に及んで諦めきれないのか、アリ・ハリラーは短機関銃を持ち真・ハイペリオンに向かって射撃を加えてきた。


「往生際の悪い奴だ。私が行ってぶん殴って来ます」

「ララさん待って。私が行きます」

「姉さま。危険です」

「大丈夫よ」


 ララの額にキスをして、ミスミス総統はコクピットの外へと出ていく。

 空中浮遊の法術であろうか、ふわりと浮き上がりアリ・ハリラーの横へと降り立った。そのミスミス総統へと銃を向け撃ち始めるアリ・ハリラーだが、弾丸は全て直前で静止していた。


「馬鹿な!? これならどうだ!!」


 アリ・ハリラーは短機関銃を捨て、胸元からサバイバルナイフを引き抜いて斬りかかる。しかし、その刃もミスミス総統には届かない。


「馬鹿な子ね。うふふ」


 妖艶な笑みを浮かべアリ・ハリラーを抱きしめるミスミス総統。そしてその額に唇を当てた。

 瞬間、法術陣が広がりその場は光に包まれる。アリ・ハリラーの体内からは黒いモヤが浮き出て四散した。そして気を失ったアリ・ハリラーの表情は至極穏やかなものへと変化した。


「任務完了ね。ララさん。この子の回収を手伝って」

「分かりました」


 真・ハイペリオンのコクピットから出てきたララがアリ・ハリラーを担ぐ。そしてピョンとジャンプして地上へと降りた。


「では、私はアリ・ハリラーをガウガメラへと運びます。何か罰を与えるのですか?」

「アリ・ハリラーは一生私の奴隷にしますから」

「ご愁傷様……だな」


 アリ・ハリラーを担いだララが後方へと走っていく。

 その時、ミスミス総統に漆黒の影が接近し背後から抱きしめた。


 重装兵デルラウェラ。漆黒の装甲服をまとったその人物は、膂力に物を言わせそのままミスミス総統を建物の中へと連れ去ってしまった。




 

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