第17話 第六章 バタフライ(3/3)

【地獄(?)に落ちた鷹大たかひろは、どうしていいか分からず、巨乳のパイと貧乳のナイと一緒に、手に入れれば生き延びられるという宝を探すことになる。火山地獄(?)から川に入って遡り、登りきると広い平地に出た。ナイは長く泳いで疲れ果てていたが、恥ずかしいために鷹大に負ぶさろうとしない。鷹大は地獄(?)では、みんな他人に無関心と訴え、パイも仲間の嬉しさを語り、ナイは仲間を自覚して負ぶさると言えた。鷹大に甘えるナイにパイが嫉妬して、ナイには胸がないと言い出したのだった】



 ピタリ


 ナイが鷹大の掌を自らの胸に当てた。もちろん、ビキニの上からである。


「ちょ、ちょっと、ナイ、こんな時に……」


 トクン トクン

 ナイの鼓動が、鷹大の手に伝わってくる。


 まだ息が切れているからか、鼓動は速い。でも、その1つ1つに力強さを感じた。

 鷹大の安心感を後押しする。

「鼓動は速いけど、元気で、しっかりとした心音だね。よかった!」


 顔を赤らめたナイが怒ってる。

「そうではございませんわ! 中身ではなく、外側ですわ!」


 貧乳のため、まず胸の中身を感じてしまったのだ。

「そ、外側って! ……」

 鷹大の指がクニクニと動く。


 指先には骨を感じるが、てのひらには、わずかな弾力を感じた。


「こらーっ! ナイ! 何やっているのだ! 無駄なあがきをするなーっ!」

 パイはナイに大声を浴びせるが、ナイは気にしていない様子。

「真ん中と端と比べて欲しいんですの」


「指には肋骨を感じるけど、掌にはその骨と皮膚の間に柔らかい層を感じるよ。その層の面積が狭いのは、ナイの体が小さいからかな。それは仕方ないにしても、女の子らしい弾力だよ。狭くて厚くないからこそ、この弾力に価値があるんだね。これはこれで結構いいかも、……」

 鷹大から助平な言葉が飛び出す。地獄と思っているから素が出ていた。


「私の勝ちですわ!」

 ナイは鷹大の手首をつかんだまま、掌を胸から離して、パイを見た!


 もうちょい! と言うかのように、鷹大の指がクイクイと空を切っている。


 パイだって黙っていない!

「オリは負けてない! 貧乳のくせに、おっぱいを語るなーっ! 鷹大も気持ちいい顔をするなーっ! 胸はオリの方が、もっともっと柔らかくて、もっともっと、気持ちいいのだぞーっ!」


 パイが鷹大の背中に抱きついて来た。

 ムニュッと柔らかい部分を押し付け、グニュグニュと圧力をかけてくる。


 その勢いで鷹大の手が再びナイの胸に当たった。今度は指に柔らかい層が触れる。

 ペタンコであるが、薄く心地よい弾力が鷹大の指に伝わってくる。


「鷹大! もっとオリを感じるのだ! 柔らかくて気持ちいいだろう?」


 グニュッ ムニュッ ムニュニュッ!

 パイは自らの胸を押し潰さんが如く、背中に体重をかける。


「鷹大が自分から私の胸に指を載せましたわ! 鷹大が私の胸を気に入ったのですわ!」

 ナイも鷹大の再接触に喜んでいる。


「ナイは思ったより、ずっと女性らしい体だね」

「嬉しいですわ!」

 もっと、顔を赤くする。


「オリは? オリは?」

 ムニュ ムニュニュ~~!

 パイは圧力を上下左右にずらしながら、体を鷹大の背中に押し付ける!


「パ、パイだって、柔らかくて気持ちいい胸だよ。女らしいよ」


「やった! オリは女らしいのだ!」

 パイは喜びのあまり立ち上がって跳ねだした。その辺りは子供っぽい。


 ピョンピョン! ヴォンヴォン!

 言うまでもなく巨乳が暴れる!


 鷹大の目は喜んで、緩みに緩む。


 視覚と触覚を一致させたい思いが、鷹大に湧き起こり、指先に力が入ってしまう!


 ググ グイッ!


 脂肪の層を押し潰し、指が肋骨の隙間に食い込んだ!


「痛いですわ!」

 ナイに平常心が戻った。


 ナイの前には鷹大の目、緩みきった鷹大の目があった!


 いやらしくメタモルフォーゼした2つの目が、ナイの鼻先で助平ダンスを踊ってるようだ。


 ナイはブルッと震えた!


「もう、放すのですわ! その目を見ると気持ちが本能的に拒絶しますわ! 始めの頃より、ずっと嫌な目に成長なさってますわ! いやらしさが増していますわ!」


 ナイは立ち上がり、フラフラしながら1歩下がった。


 ピョンピョンと跳んでいたパイも我に返り、回り込んで鷹大の顔を覗き込む。

「うぇっ! こんな目を見ると、女は逃げるぞ! より強力になったぞ! 消毒液を吹き掛けたいくらいだ! ずいぞ! これまでで1番だ! オリの人生で1番恥ずい目を見たぞ!」

 生ゴミに気付いた顔をする。


 ナイもまだ言いたい。

「その目は仲間の恥ですわ! 見ている方も恥ずかしい目ですわ!」

「やーい、恥! 恥! 恥の目! 恥の目!」

 パイはナイの言葉を受けて騒ぎ立てる。


 一気に変わった状況に鷹大は戸惑った。

「そんなー! さっきまでのいい雰囲気はどうしたんだよ! このままもう少しHなことになっても、おかしくないシチュエーションだったのに……」 


 ナイがキッと鷹大を見る。

「その目が悪いのですわ! 恥ずかしい目! 『ハズ』ですわ!」

 ナイが鷹大のいやらしい目に名前を付けた。


「ハズ目って、……」

 鷹大の目には『女の子の気持ちを冷めさせる』という強力な能力が備わった。


 それは、決して男が望まない能力だ。


「恥ずい目だ! ハズ目だ! ハズ目だ! ハズ目の鷹大だ!」


 ピシッ! ピシッ! 

 パイは、両手で指を差しながら、はやし立てた。


「鷹大のハズ目は見たくありませんわ! 生理的に受け付けませんわ!」

 さげすむ目が鷹大には痛い。


「分かったよ! もう、いじめないでよ。俺はそんなに嫌な目をしているの?」

「ハズ目ですわ!」

「女が逃げ出す目だ!」

 2人は汚物を見る態度。


「もういいよ! 言わないで! 助平な気持ちは押さえるようにするよ」

「そうして、くださいませ!」


 鷹大の目つきはハズ目から普通に、いや、それ以上にしょんぼりとしてくる。


 パイは気分が落ち着いてきた。

「まあ、ハズ目も治まったことだし、鷹大はナイを負ぶって歩くんだな!」

「いやらしいことは禁止ですわ!」

「わ、分かったよ」


 ナイが鷹大に負ぶさったが、背中には腕を当てて、ナイの胸が直接触らないようにした。


「俺って、警戒される存在になったの?」

「ハズ目にならないためですわ! さあ、行くのですわ!」


 鷹大は立ち上がった。

「パイは歩けるかい?」

 パイの疲労も気になっていた。川での疲労は回復したのだろうか?


「平気だ!」

 そう答えながら、パイが近寄ってくる。


「どうしたの?」

「何でもないのだ! 行くぞ!」

 パイは目を合わせない。


 鷹大にはよく分からなかったが、パイが登ってきた川を背にして歩き出したので続いた。

「パイ、こっちの方向でいいんだね」

「そうだ! この方向だぞ!」


 ナイは疲れのためか、すぐに眠ってしまった。


 鷹大は今後について聞く。

「ねー、パイ、他の人たちが作ってる列に合流しなくていいの?」


 パイは迷いなく答える。

「あいつらはあいつらで、行きたい方向へ進んでいるのだ。オリも同じだ! 宝の匂いをたどって、行きたい方向へ行く! ただ、それだけだ!」


 たぶん、目指す地は同じなのだと鷹大は思った。登った場所が違うから、離れてるだけなのだ。


 パイが鷹大の腕に手をやった。ナイを負ぶっている腕をつかんだのだ。

「どうしたの?」

「何でもないぞ!」

 顔を赤らめ、言い放つ。ちょっと恥ずかしそうなパイだ。

「より鷹大の近くにいた方が落ち着くのだ。ナイを負んぶしているから、オリも近くにいたいと言うか、……。歩きにくいか?」


 あどけない瞳を向ける。もしかして、1人離れてると寂しいのかな? しおらしさを感じ、嬉しい鷹大だった。


「そ、そんなことないよ。他の人たちのこともあるから、急ぎ足の方がいいかな?」


 嬉しい鷹大も、パイの態度が照れくさかった。

 話題を急ぎ足に変えて、弾む心をはぐらかした。

 また、パイがハズ目にとらわれていなかったので、安心したのだった。


「そうだな、先を越されてはまずいからな、できるだけ急ぐのだ」

 ナイが寝ていることもあって、2人は黙って速めに歩いた。


 パイは、鷹大の腕をずっとつかんでいた。




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