VOL3

『黙って手を上げろ』


 押し殺したような声が、俺に呼び掛けた。


 ライトの明かりの中に、三人の人物が現れた。


 三人とも頭にベレー帽を被り、黒いジャンパーを着ている。


 俺に声をかけた男は、GIコルトの銃口をまっすぐこちらに向けていた。


 あとの二人は、自動小銃(AK47)を構えている。


『入口の警告が見えなかったのか?』


『悪いな。年のせいか目が悪くてね。読めなかった』


 俺は奴らが何か言う前に手を挙げた。


 GIコルトを持っている男は、どうやら3人の中ではリーダーらしい。男は銃を振ってAKの二人に合図をし、俺の身体検査を始めた。


 最初に発見したのは当然拳銃だった。


『これは何だ?お前、サツか?』


『こんな山の中にやってくるお巡りなんかいないさ』

 

 二人の部下は俺の身体から全ての荷物をむしり取り、銃を突きつけ、引っ立てて連行した。



 連行された先には、似たような恰好をした男たちは約10人はいた。


 俺はその中の一部屋に入れられた。


 窓もない、陰気なかび臭い部屋だった。


 俺の荷物を一つだけある机に並べ、俺は椅子に縛り付けられた。


『どうしても言わないつもりか?』


 男はGIコルトをちらつかせて低い声を出した。


『男とおしゃべりをするのは趣味じゃない』


『痛い目を見ても、かな?』

 

 男の隣には、背の高いがっちりした体格のプロレスラー並みの男が立っていて、手には総合で使うオープンフィンガーグローブをはめている。


『だから?』


 椅子に座った男は、チッと舌を鳴らし、プロレスラーに指を鳴らした。


 大股で男は俺に歩み寄るや、俺の襟首を片手で掴み、拳を振り上げて一撃をくらわせてきた。


 こっちは縛られたまま、椅子から転げ落ちた。


 プロレスラーは何度も俺を起こして、同じことを繰り返した。


『どうだ?これでも何も言わないつもりかね?』


『ハンデキャップには丁度いいな。ただ、出来ればケンカは対等でさせてもらえないかな?』


『野郎!』


 男は床に転がった俺を容赦なく蹴飛ばす。

 

 確かにあのデカブツの攻撃は効き目があった。

 

 もう少しで意識が遠くなりそうだった。


『もういい、6号。そのくらいにしておけ』


 陰気な顔つきの男が命令を下す。


『喋れるようになるまでここに閉じ込めておく。いいか。我々を舐めるなよ・・・・』


 そういい捨てると、二人は俺を残して部屋から出て行った。 

 


どの位時間が経ったろう?


 俺はさっきから手を動かし、ロープと格闘していた。


 10分もかからずに、俺は見事に縛(いまし)めを緩めることに成功した。


 部屋の中は薄暗い。


 目を透かして見まわすと、隅のテーブルに、俺の『荷物』が、そのままになっていた。


 しかし奴らだってそれほど間抜けじゃない。


 当然部屋のどこかに隠しカメラが取り付けてあるだろう。


『なあ・・・・お願いだ・・・・寒くて凍えそうなんだ‥‥全部喋るからよ‥‥」


 わざと情けない声を出して、頭だけを動かして怒鳴った。


 すると、待っていたかのようにドアが開き、AKを持った見張りが二名入ってきた。


『うるせぇなぁ、ようやく喋る気になったか・・・・』


 にやにや笑いながら、男が俺に屈みこんだ。


 瞬間、俺は椅子を蹴散らして跳ね起き、男の腹に一撃を加えると、彼のAKをむしり取った。


『動くなよ。動くとこいつの命はないし、お前もハチの巣だ』


 俺は男の首に一撃を加えて失神させると、銃を捨てたもう一人も殴り倒してやった。


(自衛隊さん、有難う!)


 俺は心の中で呟いた。



 

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